【野球】中田翔「恩師」が導いた電撃トレード 新天地で恩返しの活躍を

 苦渋の表情を見せる中田翔(撮影・園田高夫)
 厳しい表情で会見する中田翔(撮影・園田高夫)
 頭を下げ謝罪する中田翔(撮影・園田高夫)
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 巨人は20日、日本ハムの中田翔内野手(32)のトレードに合意した。この日、両球団を通じて発表された。

 中田は同僚の選手1名に暴力行為をしたとして、球団から出場停止処分を受けていた。巨人・原辰徳監督も明かしているように、関係者の話を総合すると、今回の一件を受けて栗山監督が、他球団にトレードでの移籍を模索。中田にとっては2012年、初めて開幕4番に指名されたシーズンから信頼関係を築いてきた。そんな恩師自ら再起の道を熟慮した上で、救いの手を差し伸べた巨人との温情トレードが成立したという。

 そんなニュースを見ながら、2017年のWBC取材を思い出していた。大阪桐蔭時代にアマ野球担当だったことで、久々に再会したこの期間はよく話を聞いた。代表チームのもそうだが、日本ハム、「恩師」と慕う栗山監督について話すと、口調はいつも熱っぽくなった。

 「素直にすごい人だと思うんよ。本当に監督を喜ばせたいよ」

 リーグ制覇した前年、中田は不振で苦しんでいた。4番の重責にケガもあった。「2軍に行かせてくださいといつ言おうか、そればかり悩んでいた」という。そんな時、監督室に呼ばれた。

 「怒られるのかと思ったら違った。翔はどう思う?って。お前でダメなら俺は納得できるんだぞって。そんなこと言われたのは初めてだった。本当にこの人を男にしたいと思ったよ」

 今回、当該行為を擁護するつもりはない。「愚かだった」と、本人が非を認めているように、深く反省し、信頼を裏切ったチームメートや、ファンへの謝罪、そして再発防止の徹底が求められる。ただ、携帯でネットニュースを読んでいると、ある記事が目に留まった。

 「日本ハム 敵地で中田翔のタオルを掲げるファンも」

 プロ野球が再開された13日、日本ハムはソフトバンクとの一線で六回まで0-3と劣勢。七回の攻撃時、敵地に「ファイターズ賛歌」が流れると、中田翔のタオルやボードを掲げるファンの姿もあった。胸が締め付けられる思いだった。

 再起への道のりは決して平坦なものではないだろう。ただ、長く接してきた者の一人として、今回の一件で負のイメージばかりが独り歩きしていくのはつらい。多情に見えて一途、豪快に見えて繊細。救い手、“拾う神”がいたことも、彼がここまで野球に取り組んできたことの証明で、人柄でもあるのだと思う。

 中田は、巨人の終身名誉監督でもある長嶋茂雄氏の言葉に感銘を受け、サインを書く時に「野球というスポーツは人生そのものだ」と添える時がある。いまはコロナ禍で人数が限られるが、野球場はグルッと一周を客席で囲む。どんな姿も必ず誰かが見ている。

 両球団の温情と、不思議な縁で導かれたトレード。会見で「チャンスをいただいた。一から自分を見つめ直してしっかりやりたい」と語ったように、贖罪(しょくざい)の思いは、これからの行動で示すしかない。非難も、擁護も、全てが熱いエールだ。「紳士たれ」-の巨人軍で再起を願う。(デイリースポーツ・田中政行)

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