【野球】山本由伸がオリックスに入って良かったと思う理由
オリックス・山本由伸が先日、自主トレを公開。グラウンドに登場するや、いきなり90メートルの遠投を軽々とやってのけ、同じ距離でスライダーを投げるという人間離れした芸当まで披露した。
「バッチリです」
こう笑顔で答える姿にこのオフの充実ぶりが伺えた。
プロ3年目の昨季は先発再転向でいきなり最優秀防御率のタイトルを獲得。11月のプレミア12ではセットアッパーとして世界の打者を圧倒。その名をとどろかせた。
ところが、世間の注目が集まる一方でメデイアへの露出はそれほど増えることはなかった。球団広報は苦笑いで答える。
「取材の依頼はたくさんいただいたのですが、由伸のスケジュールと合わなくて。ほとんどお断りしました」
プレミア12が終了し、本格的なオフを迎えたのは12月に入ってから。ここで山本は体を休めるのではなく、シーズン中に気になった部分を徹底的に鍛えたかった。トレーニングのスケジュールを優先したため、取材を断るしかなかった。
球団とすれば、認知度が上がったこのタイミングで大々的に売り出したいところだが、あえて本人の向上心を優先した格好だ。
そんな球団に対して山本は常々、感謝の言葉を口にする。
「オリックスに入ってよかった。スタッフの方もそうですし、首脳陣にも入団したころからずっと配慮してもらいました。大事に使ってもらったおかげで今があると思っています」
入団当初の福良淳一監督(現GM)は2年目にセットアッパーに抜てきしたが、連投は2試合までと徹底した。抜群の安定感を誇る勝ちパターンに3連投をさせないということは首脳陣にとってかなりの制約であったと想像するが、そこはかたくなに守っていた。
先発の柱となった昨季は夏場にキャッチボールする姿に異変を感じた高山投手コーチ(現ヘッドコーチ)がストップを掛けた。脇腹痛で戦列離脱。1カ月近くチームを離れた。それでも大事に至らなかったため、規定投球回数になんとか到達しタイトル獲得となった。首脳陣の配慮があったからこそ日本を代表する投手に成長できたと実感している。
選手を宝と考え、将来を見据えた起用法で大事に使う。球団と現場の思いが一致しているからこそできることだ。最近は“選手ファースト”の言葉をあちこちで耳にするようになった。オリックス首脳からは聞いたことがない。あえて言葉にする必要がないからだろう。(デイリースポーツ・達野淳司)