【野球】オリックス 育成選手から神様になった男

 プレミア12が終わった。印象的だったのはオリックスから台湾代表に初選出された張奕投手の活躍ぶりだ。

 11月6日・1次ラウンドのベネズエラ戦で7回無失点の好投で勝利投手になると、中5日で臨んだ12日・韓国戦でも七回途中まで無失点の好投で2勝目。トップチームの韓国戦勝利に母国は大いに沸いた。蔡英文台湾総統は自身のツイッターで勝利をたたえ、現地紙には張奕の記事に『神様!』の見出しが躍った。

 プレミア12で残した13回2/3無失点は前回大会に大谷翔平が記録した13回無失点を越える大会記録となった。

 こんな活躍に台湾代表の関係者も目を丸くした。

 「正直、ここまでの活躍は想像していなかった。日本での映像も見ましたが、彼はこの大会で成長した。張奕の活躍は3つのウインです。台湾代表、張奕本人、そしてオリックスにとっても良かったと思います。代表を辞退する者もいますが、国際大会に出ることのプラスを示してくれた」

 今大会での張奕はオリックスのときとは別人のようだった。ピンチを迎えても動じず打者に向かって行く。打ち取ったら吠える。闘争心をむき出しにして投げる姿は観客を強く引きつけた。

 「自分でも映像を見返してビックリしました。“あれ、オレこんな感じだったっけ”って」

 笑って振り返った。国を代表するというプレッシャーは想像以上だったという。だが、マウンドに立って新たな自分に気づいた。

 「無になれたんです。ピンチもたくさんあったんですけど、何も考えず打者に向かっていけたら抑えられた。これまでは打たれたらとか、こうやって投げなきゃとか考えていたけど、無になれたら自分の投球ができると知りました」

 やはり今大会で大きな収穫を手にしたようだ。

 1年でこんなに成長した選手は見たことがない。振り返れば今年の初登板は2月の宮崎キャンプ。2軍紅白戦だった。慎重になりすぎ長い間合いとボール球を連発。小林宏2軍投手コーチに大目玉を食らった。

 「めちゃくちゃ怒られましたね。“もう使わんぞ!”って。次はテンポを心掛けたら簡単に三者凡退で終われて。“やれるんやったら最初からやれ!”ってまた怒られました(笑)」

 当時の背番号は122。育成選手だった。そこから5月に支配下登録を勝ち取り、7月に先発転向。8月8日にプロ初先発で初勝利を挙げた。そして、今季2勝4敗の投手がプレミア12で最優秀先発投手、最優秀防御率、最高勝率投手の投手三冠に輝くまでになった。

 張奕は「たまたまです。オリックスで活躍するためにどうすればいいか。今はそれしか考えていません」と早くも来季を見据えた。

 どこまで伸びしろがあるのか想像もつかない。“神様”になった男のサクセスストーリーはまだ序章なのかもしれない。(デイリースポーツ・達野淳司)

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