【スポーツ】張本智和の「チョレイ」、聞けるのはあと数年?

 今年の卓球全日本選手権は、中学2年の張本智和(エリートアカデミー)が「新時代突入」を証明する大会だった。ジュニアの部・男子シングルスで14歳205日での史上最年少優勝を果たすと、シニアの男子シングルスでも決勝でエース水谷隼(木下グループ)に完勝し、14歳208日で史上最年少制覇。名実ともに、日本のエースとしての第一歩を歩み出した。

 そして、今回も大きく注目されたのが、もはやおなじみとなった「チョレイ」というかけ声だ。得点を決める度にガッツポーズをしながら雄たけびを上げる姿は、既に彼の代名詞となっている。

 一方で、この「チョレイ」に対して、「うるさい」「相手に失礼である」との否定的な意見もあるようだ。しかし、もちろん現段階で卓球のルール上問題はなく、相手選手が「失礼だ」と憤慨した事実もない。ただ、こういう反響が出るのも、ある意味では張本が“国民的スター”になる上での洗礼なのかもしれないと思った。

 たとえば、かつて福原愛の代名詞となった「サー」というかけ声。04年アテネ五輪の際には大流行した。さらに記憶に新しいところでは、水谷の倒れ込むほどの派手なガッツポーズ。16年リオデジャネイロ五輪の時には、「サンデーモーニング」で野球解説者の張本勲氏から“喝”を入れられるなど大きな話題となった。

 ただ、いずれも世間に注目される前から本人がやっていたことであり、卓球ファンにはおなじみの所作だった。張本の「チョレイ」も同様だが、数々の最年少記録を塗り替えるなど卓球ファン以外からも知られるようになったからこそ、さまざまな意見が出てくるのだろう。卓球競技がさらにメジャーになり日常的に試合を見る人が増えれば、もう少し理解も深まるのではないか。

 張本の素顔はシャイで聡明(そうめい)な14歳の少年。両親のアドバイスで小学5年頃から声を出し、緊張の中でも実力を出すために自らを鼓舞するようになった。ちなみに、「チョレイ」という言葉も周囲が“そういう風に聞こえる”だけで、特に意味はない。

 男子日本代表の倉嶋洋介監督は「声を出すのは彼の卓球の中で唯一、中学生らしいところ。彼が声を出して調子を上げるタイプなので。それは中学2年らしいところ。あと数年したら静かにやり出すと思う」と笑う。小さい子に対して、指導者が声を出せというのが定石。中学生の大会では、みんな大声を出したり、卓球台の周囲を走り回ったりするぐらいは当たり前だという。「張本も一緒。ただ強いから注目されるだけ」と話した。

 ただ、張本も世界選手権8強に入るなど既にトッププレーヤーの仲間入りを果たし、徐々に変化してきた。「合宿の練習でも今は全然声を出さない。今後、少しずつそうなると思う。試合の中でプレーのことを考えるようになると自然に声は出なくなる。その場で爆発しちゃうと、次のことを冷静に考えられない。少しずつ卓球を理解してきている。どうなっていくか楽しみ」

 一方で、「でもあまり(「チョレイ」を)なくしてほしくない」とも。「あれ(声)が彼の勢いをつけるところだし、周りの人も注目してくれる。だんだんなくなっていくだろうけど」。“まな弟子”の急激過ぎる成長に対して寂しそうに笑った。

 張本が声を出さなくなるときは、おそらく金メダリストとして悠然と構えるようになったときだろう。現在世界ランク11位だが、中国選手などまだ倒していない格上はいる。少なくとも2020年東京五輪までは、世界の強豪相手に闘志むき出しにする天才少年を見たい。(デイリースポーツ・藤川資野)

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