【野球】日本高野連がタイブレーク導入に傾いた過程

 日本高野連が春夏の甲子園の試合進行方法変更へ、大きな結論を下す可能性が高まってきた。今春のセンバツで延長15回引き分け再試合が2試合も続いたため、選手の健康面に配慮して、タイブレーク制などの導入を本格的に検討する。6月の技術・振興委員会などで議論し、理事会で方針を示す。

 新しい試合進行方法を導入する場合、最も有力視されているのはタイブレーク制だ。延長戦で塁上に走者を置いた状態で試合を再開し、早期決着を図る。

 導入に傾きつつある現在までの経緯を振り返ると、まず日本高野連が本格的に選手の健康管理に動き始めたのは1991年だった。夏の甲子園で準優勝した沖縄水産・大野倫投手が、連投などで右肘を疲労骨折して投手生命を絶たれた。その後、甲子園では出場校の投手に肩肘のメディカルチェックが行われるようになった。

 その後は何度も試合進行方法などが議論され、再び大きな話題となったのが、2014年の全国軟式野球大会準決勝だった。中京(岐阜)-崇徳(広島)が延長50回を戦ったことで議論が再燃。日本高野連は同年、全加盟校にタイブレーク制の導入についてアンケートを実施した。条件付きを含めると、49・7%が「賛成」という結果が出た。

 それでも甲子園での導入は保留されてきた。「人為的な形で3年間の高校野球生活の決着をつけるのはどうなのか」、「延長戦での名勝負がなくなる」などの意見が多かったためだ。

 そして、今春のセンバツで再び大きく風向きが変わった。3月26日に2試合連続で延長15回引き分け再試合となった。日本高野連・竹中事務局長は「(同28日の)技術・振興委員会では、もうタイブレーク制導入へ踏み切らないとだめじゃないか、という意見が増えた」と言う。

 センバツ後には、日本高野連への電話などで賛同する意見が増加。4月19日の高校野球選手権大会運営委員会では、委員からタイブレーク制の質問が出た際、日本高野連・八田英二会長は「ちゃんと結論を出したい」と発言したという。竹中事務局長も「このまま何も変わりませんという答えはないのかな、という気がする」と話した。

 タイブレーク制の対案としては、投手の球数制限、投球回数の制限などが挙がる。この2つは何人も投手がいる強豪校であれば対応できるが、エース1人に頼るチームは不利になるケースが出てくる。待球作戦などで本来の趣旨とは違う形で利用されることも想定される。竹中事務局長は「球数制限などは否定的な意見が非常に多い。タイブレーク制が最善とは言えないけど、次善の策」と話す。

 新しい試合進行方法は、今夏の甲子園で導入されないことは決定済み。来春センバツからの導入を検討するリミットは、11月下旬の日本高野連理事会だ。試合の早期決着を優先すれば高校野球の魅力に影響があり、名勝負を優先すれば選手の体に影響がある。日本高野連は難しい選択を迫られることになる。

 個人的には選手の健康面を考えた場合、今後は日程の見直しも1つの案ではないかと思う。現在は春夏の甲子園で休養日は準々決勝翌日の1日だけだ。例えば、甲子園練習の期間も試合日に充てて大会期間を長くすれば、休養日が増えて連戦も減る。甲子園は阪神タイガースの本拠地でもあり、かなりの調整が必要になるため難しい面もあるが、日程の見直しは根本的な選手の負担軽減につながると思う。(デイリースポーツ・西岡 誠)

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