【野球】阪神入りの糸井、奔放な言動の裏には繊細な「気遣いの心」

 オリックスから国内FA宣言していた糸井嘉男外野手(35)が21日、阪神への移籍を決めた。オリックス選手会納会でもあった当日、「話したほうがいい」という糸井の考えで急きょ、囲み取材が行われたという。彼らしいなと感じた。

 2014、15年の2年間、オリックス担当として糸井を取材した。ダイナミックなプレーとともに、「宇宙人」と言われる奔放な発言。その裏には、周囲を気遣う繊細な面が垣間見えた。

 ひらめきで言葉が出るのか、よく考えて言葉を選んでいるのか。読めないことも多かったが、相手の心に響く言葉を先読みして発する才能は抜群だった。

 14年12月の契約更改では、契約年数について「10年契約です!」とあり得ない発言。さらに、15年シーズンで主将に就任することまでぽろりと口にした。本来は春季キャンプ前日に発表予定だったので球団関係者は焦っていたが、糸井なりのサービス精神が“フライング”を誘ったのだろう。

 一方で、シーズン中はプレーに集中するあまり、敗戦後に口を開くことは少なかった。記者が質問に行っても「次、頑張りま~す」と一言だけ。無言の時もあった。

 しかしそんな時は「すみません」と言わんばかりに、かすかな目配せ。話したい気持ちはあるが、軽々しく口を開きたくないというデリケートな心理状態を表していた。

 近大で糸井を指導した榎本保近大前監督は「相手の気持ちを読んで、自分の面白さで雰囲気を和ませたり、相手の怒りをかわしたりする才能があった」と、当時を振り返る。特に、後輩には優しかったという。

 近大野球部は寮生活。夜の点呼に遅れた選手がいると、遅れていない糸井が「ちょっとタクシーが遅れたそうです」と、当該の選手の代わりに弁解に来たことがあったそうだ。

 ある試合では、榎本さんが糸井をしかろうと「コノヤロー」と拳を振り上げるそぶりをしたところ、糸井は何を思ったか榎本さんの振り上げた手にハイタッチ。これには榎本さんの怒りも収まってしまったらしい。

 また、監督を辞めた榎本さんが自宅で過ごしていた時。突然、呼び鈴が鳴り、出てみると玄関には糸井の姿が。自主トレのランニング途中で立ち寄ったといい「監督、顔を見に来ましたよ」と優しい笑顔を見せたそうだ。

 阪神の選手となれば、オリックス時代とは環境も大きく変わるだろう。連日、何らかのコメントを求められ“追われる立場”になるのは必至。糸井には繊細さに加えて、いい意味での鈍感さも身につけ、持ち前のコメント力でチームを盛り上げていってほしいと思う。(デイリースポーツ・中野裕美子)

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