【芸能】プロ野球選手から異色のセカンドキャリア…「俳優」としての立場を築いた元虎戦士

 異色のセカンドキャリアを持つ元猛虎戦士に会い、いろいろなことが頭をよぎった。

 広島カープの“男気”黒田博樹投手ら今年も多くのプロ野球選手が球界を去った。だが、功成り名を遂げ、第二の人生=セカンドキャリアに踏み出す人間はごく一握りだろう。

 指導者や野球解説者、はたまたスカウトや球団職員などに転身するにも、実績が要求される。大半の選手は、サラリーマンに転身したり、飲食店関係の仕事に就くなどして市井の人となっていく。

 まれに、そのキャラクターが愛され、タレントに転向する人間もいるが、本格的な「俳優」となるとそうはいない。そのひとりが、元阪神タイガース投手の嶋尾康史(48)である。86年のドラフト2位で東洋大姫路から阪神入りしたが、たび重なる右ヒジ故障で96年にユニホームを脱いだ。1軍通算66試合に登板し、3勝7敗1セーブ、防御率4・06である。人気球団の選手でなければ彼の人生はどうなっていたか。「やっぱり関西では阪神の看板は絶大。阪神にはずっと感謝している」と嶋尾はいう。

 私は1989、90年の2年間、タイガースの番記者だった。その頃、若手の有望株だった嶋尾を取材していたが、トラ番を離れて他球団の番記者となってからは、いつしか疎遠となっていた。その嶋尾とつい先日、再会した。もう15年以上の歳月が過ぎていたと思う。屈託のない笑顔は昔のままだが、芸能界では野球界では築けなかったポジションをしっかりと築いた男の顔になっていた。

 当初は俳優になるつもりなどなかった。だが、引退後、今の事務所「ACT-21」の社長と知り合い、翌年から毎日放送、KBS京都ラジオで活躍。98年にTV東京の連続ドラマ「魚心あれば嫁心」で俳優デビューし、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」にも出演した。現在は、俳優だけではなく、演出家としても活躍している。

 今年12月16日から3日間は、大阪北区の「スタジオACT」で、また来年2月23日から4日間は「赤坂RED/THEATER」で行われる柴田よしき原作の舞台「猫は毒殺に関与しない」を演出する。NHK朝の連ドラ「まれ」で主人公の先輩パティシエ役でブレークした柊子(25)が主役を務める、ユーモラスでブラックな世界観のステージだ。

 また、今月からはデイリースポーツのロゴを右袖に付け、毎週末行われる、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦スポーツとして捉えている「日本eスポーツリーグ」に、「インフィニティ大阪」として挑戦する。新たな道だ。

 苦労の連続だったに違いないが、嶋尾本人は「本当に運が運を呼んだ感じ。人生って分からない」と、多くを語らない。だが、彼と話し、どの選手にもさまざまなセカンドキャリアに挑戦する資格がある。今はただ、ユニホームを脱いだ選手たちの今後にエールを送るのみである。(デイリースポーツ・今野良彦)

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