【スポーツ】“勝負の天才”瀬戸大也、東京金へのカギはタフさ

 お祭り男が、祭りの後も燃えている。リオデジャネイロ五輪から2カ月。熱狂の余韻も秋風と共に少しずつ薄らいでいく中、誰よりも早く4年後の東京五輪に走り出しているのが、競泳男子400メートル個人メドレー銅メダルの瀬戸大也(22)=JSS毛呂山=だ。

 リオから帰国後、9月からはインカレ、国体、W杯中東シリーズ3大会に出場し、さらに同アジアシリーズ3大会を転戦中。多種目に挑戦し「タフさを身につけたい」と、マルチスイマーへの進化を目指している。

 リオ五輪金メダルの萩野公介(東洋大)が「競泳の天才」なら、瀬戸は「勝負の天才」。幼少期から、ここぞという場面でバスケットボールのフリースローに成功するなど、大舞台で集中力を発揮してきた。自宅の部屋にはディズニーキャラクターのスティッチの巨大なぬいぐるみがあるが、「UFOキャッチャーで狙って2回で獲りました」とニヤリ。それでも決して自身を過大評価することはなく、「(機械の)アームが強かったっすね」とサラリと言ってのける。

 世界選手権で2連覇した勝負強さも五輪の舞台では不完全燃焼に終わった。予選では自己ベストをマークし片りんを見せたものの、決勝にすべてを懸けてきた萩野についていけなかった。予選から決勝までは約9時間。昼寝で回復に努めたが、瀬戸は「予選のダメージが残ってると思った」と明かす。敗因は戦略ミスと決勝で出し切るためのスタミナ不足。レース直後のインタビューでは「いや~疲れちゃいました」と報道陣を笑わせ“大物感”を漂わせたが、それは本音でもあった。

 金メダルを逃しても明るくあっけらかんとした22歳だが、関係者は「ああ見えて本人は相当悔しがってますよ」と心中を察する。いや、行動を見れば悔しさは明らかだった。

 8月に帰国してすぐ、スマートフォンの待ち受け画面を東京五輪のエンブレムに変更。「シンプルだし、いつでも思いだせる」。ビール好きを公言しているが、祝勝会などの宴席に呼ばれても競技のことが頭を離れることはない。「体に気をつけながら、晩ご飯を食べてから行って、つまみは食べずにお酒だけ飲んだりする」と意識の変化を明かした。

 また帰国翌日、入浴中に「オフ要らなくね?」と休みを返上してのW杯中東シリーズ出場を思い立ち、すぐに日本代表の平井監督に電話。3大会で計21種目に出場し、レース間隔が数分という過酷な状況に身を置いたのは「リオでは決勝で爆発できなかった。タフさがないと痛感した」という反省からだった。自費参加で100万円近い出費が見込まれたが、計6種目を制するなど稼いだ賞金は400万円以上。退路を断ち、精神的なタフさも磨いた。

 来春には早大を卒業し、スポンサーの支援も受けながら東京都北区の国立スポーツ科学センター(JISS)を拠点に練習する方針。「社会人になって半分プロみたいな感じでやっていくので、その自覚とか、東京でいいメダルを獲りたいので、競技への意識は歳を重ねるごとに強くなっている」。天性の勝負強さではなく、本当の実力でライバル萩野に勝つ-。瀬戸の目はマジだ。(デイリースポーツ・藤川資野)

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