衝撃だった。クライマックスシリーズ第５戦。九回のマウンドに上がったのはその試合に野手でスタメン出場していた大谷翔平。スタンドが騒然とする中で、マウンドで悠然とキャッチボールをして準備をする姿。周囲を寄せ付けないほどの集中力を感じられた。

　過酷な場面ほど力を発揮するのが今年の大谷翔平。日本最速の１６５キロをマークし、１回を３人で抑え日本シリーズ進出へと導いた。

　この起用が大当たりしたが、これこそ大谷の力を発揮させる狙いだったのかもしれない。今回に限らず、今季を振り返ると起用法についてはサプライズが多くあった。ＤＨを解除したリアル二刀流、１番投手、そして野手からの抑えを務めプロ初セーブ。あり得ない起用法だと思う時ほど大谷は力を発揮した。今年、その試合後の話は、同じように、前向きな発言だった。

　５月２９日の楽天戦、指名打者を外し、６番投手で出場し勝利後「すごくいいリズムでいけました。バタバタすることはなかった」と振り返っていた。１番投手の時もそうだ。「やりにくくはなかった」。そして先日のＣＳファイナルＳ第５戦。「いい雰囲気で上がれた」と涼しい顔で振り返る。しんどいと思わず、意気に感じてプレーする。厳しいと思われた局面でことごとく、結果を出した。

　例えば、ファイナルＳ第５戦を栗山監督は「（マウンドに）いきたがっていた目をしていたんだ」と振り返る。前向きなアドレナリンが出ていると、底知れぬ力を発揮する。そして日本最速１６５キロをマーク。栗山監督は「ただいいボールを投げようと思っているだけのように思えた」と振り返る。

　目の前の打者を抑える－。その１点に集中するシチュエーションになるからこそ力を発揮する。投打のどちらが本人にとって楽しいのか大谷に、年明けに聞いたことがある。返ってきた答えは「どっちがということはないです。どっちもやらなければいけないんです」だった。

　試合後は出歩くこともない。余暇の時間も野球漫画を見ることが多いという大谷。今年は野球漫画でも出来過ぎと言えるほどの結果を残してきた。「ピッチャーとしてのクオリティーはまだまだ低いですし、もっともっとよくなるように」と大谷。今季の投打二刀流での活躍は日本シリーズで見納め。来季は何をしでかすか、ますますの投打一挙手一投足から目が離せなくなる。来年以降の起用法、そしてどんなパフォーマンスを見せるか楽しみに待ちたい。（デイリースポーツ・水足丈夫）