【スポーツ】介護士ボクサー・大沢宏晋、11・5ベガス世界戦でひと泡吹かすか

 大阪の小さなジムから「ベガスで世界戦」というビッグな夢をつかんだボクサーがいる。元東洋太平洋フェザー級王者でWBO世界同級2位の大沢宏晋(31)=ロマンサジャパン。11月5日、米国ラスベガス・トーマス&マック・センターでWBO同王者・オスカル・バルデス(25)=メキシコ=を相手に初の世界挑戦が決まった。

 戦績はバルデスが20勝(18KO)で初防衛戦。大沢は30勝(19KO)3敗4分け。メーンに6階級王者マニー・パッキャオ、セミファイナルに同5階級王者のノニト・ドネア(ともにフィリピン)が出場する興行の前座。世界的には全くの無名男が世界のボクシングの中心地にいきなり降り立つ。まさに「アメリカンドリーム」だ。

 幸運も不運も引き寄せる強い星の下に生まれたのが大沢だ。

 幼少時、テレビでスーパースターのマイク・タイソン(米国)を見て、「俺も世界王者になる。ラスベガスでスターになる」と友人に誓った。もちろん友人らには笑われた。

 小3から打ち込んだのは野球。“お山の大将タイプ”は高校1年時、「団体競技に向いていない」と野球も高校もやめた。生活は荒れ、道を踏み外しそうになった時、幼少期の夢が自身を救った。

 18歳時、ボクシングを開始。「50メートル5秒台、拳も硬かった。人を殴れてお金までもらえる」と身体能力も気持ちも向いていた。04年にデビューし次第に頭角を現していった。11年に東洋太平洋同級王座を獲得し、3度防衛。しかし12年に順風な人生は暗転する。

 JBC(日本ボクシングコミッション)に虚偽の報告を行い、韓国で未公認のタイトル戦を行ったことが明るみに。大沢自身は陣営に任せていただけながら「知らなかった」では済まない。1年間のライセンス停止と重すぎる処分なった。

 「人間としていろんなことを考えた。いい充電期間だった」。今でこそ前向きに捉えられる、どん底の1年が大沢の転機だった。

 13年に再起すると連戦連勝の7連勝はすべてKO勝利だ。新たな師との出会いが180度、ボクサースタイルを変えさせた。

 処分明け後、タッグを組む中島利光マネジャー(45)はメキシコのスーパースター、マルケス兄弟(兄・フアン・マヌエル=4階級制覇、弟・ラファエル=2階級制覇)のトレーナーを長期にわたり務めた名伯楽だ。

 東洋太平洋王者時代、5階級制覇王者・フロイド・メイウェザー(米国)の巧みな防御を目指した大沢は、今は好戦的なメキシカンスタイルでKO狙い。世界基準を知り尽くす中島氏なしには“ベガスから声がかかる”ことはなかっただろう。

 “介護士ボクサー”で知られ、養護施設の社長業をしながら、選手と両立。ファイトマネーはデビュー戦以来、身体知的障害者団体などに寄付してきた。世話をするお年寄りからは「ヘルパーの人がまさかベガスって」とビックリされる。

 下馬評は不利ながら番狂わせの可能性も十分ある。バルデスは初防衛戦の緊張感がある上に「そこまで一線級とやっていない。チャンスはある」と中島氏は穴を見付けている。「回りからは『いつも何かしでかしそう』と言われて来た」と大沢。11・5世界を驚かす気は満々だ。(デイリースポーツ・荒木 司)

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