【ライフ】恐るべし「ポテそば」の壁 斬新の次は風流すぎる?駅そばで勝負も…

 見た目から何とも楽しげな「満月かに玉うどん」
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 「ポテそば」を超えろ-。フライドポテトをそばの上にドーンとのせた「ポテそば」、かき氷をドーンとのせた「かき氷そば」。斬新すぎるメニューでSNSなどを中心に話題をさらった「阪急そば」が「ポテそば超え」の社命を受け、今秋に新メニューを投入した。その名も「満月えび十(テン)そば」と「満月かに玉うどん」。「お月見物語」と銘打ち、満月をウサギがお月見しているという秋の情景を丼の中で再現したらしい。なんと風流で楽しげな駅そば。阪急そば全23店舗で大展開するという自信の新作をすするべく、阪急・十三駅へと向かった。

 これまでの斬新すぎるメニューとは一線を画す2つの新メニューだが、テーブルに運ばれてくると、やはり笑ってしまった。

 「あの…今回も、麺が見えないんですね…」

 「ええ、そこはもうこだわってやりました!」

 「阪急そば」を運営する阪急阪神レストランズの営業企画部・下井裕利さん(企画管理グループ兼CSグループ長)もそう胸を張って笑う。「満月かに玉うどん」の丼の中はというと、大きな満月に見立てたという丸い薄焼き卵がドーンと一面に広がる。その上には、こちらも満月のような、かに玉。さらにススキを刻みあげ、雲をネギ、月見団子を白玉でイメージ。そして紅白かまぼこによるウサギが2匹、仲良さそうにピョコンといるのだ。

 これは確かに、駅そばらしからぬ風流さ…。さっそく、いただくのだが、世界観を壊さないよう、慎重に満月の薄焼き卵とかに玉を切り、うどんとともにすする。ふわふわのかに玉の食感、そして仕上げにかけられた生姜の餡の風味が抜群に合う。脇を固める刻みあげとネギは裏切るはずもなく、ウサギの何とも言えないかわいさには癒される。また「満月えび十(てん)そば」には、エビが10尾も入った特製のエビ天がドーンと入り、プリプリの食感が楽しめる。見た目も味も贅沢で、ボリュームも満点。これで、どちらも500円。「もうけは度外視で『阪急そばは、こんなこともできるんや』というのをワンコインでやりたかった」と下井さん。まさに渾身の新メニューといえる。

 ただ、やはり「ポテそば」の壁は厚かったようだ。

 満を持した秋の新作として9月下旬に販売を開始すると、目標の数字は何とかクリアしているものの、期待したほどの快進撃にはいたっていないという。「やっぱりパンチが弱いのか…一度食べていただけたら、絶対に良さは分かってもらえるはずなんですけど…」。自信作なだけに、下井さんも悩ましげだ。確かに、何の文句もない美味しさと素晴らしい見た目なのだが、何かこう、圧倒的な魅力が感じられないのは残念なところ。「阪急そば お月見物語」と題し、カニ玉とエビ天のパワーとボリュームが、キツネに狙われたウサギを救ってお月見を楽しむという、オリジナルストーリーも作ってパンフレットにあしらうなど、あの手この手で盛り上げるものの、どうやら名物メニュー入りは難しそうだ。

 「阪急そば」では来年に開業50周年を迎えるため、記念メニュー作りも控えているという。「まだ全くの白紙で、これから考えないと…とにかく社内のプレッシャーがすごいです」と下井さん。「ポテそば」の壁を超えるには、やはり同じく斬新すぎるインパクトと味が必要なのか。新たな名物メニューの誕生を、祈ります。(デイリースポーツ・石川真之)

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