【スポーツ】3度目五輪、競泳・藤井拓郎が挑む最後の大仕事

 個人競技におけるチームプレーとは何か。野球の自己犠牲やサッカーの献身といった明確な形はない。そのあいまいなものを近年体現してきたのは、日本の競泳陣だ。中心にいたのが、引退した北島康介さんだったことは言うまでもない。

 ロンドン五輪の400メートルメドレーリレーで銀メダルを獲得した時に「康介さんを手ぶらで帰すわけにいかないと(メンバー)3人で話していた」と言ったのは松田丈志。松田と同じく同リレーのメンバーだった藤井拓郎も、リオデジャネイロ五輪でメドレーリレーの代表に入った。

 7月1日に都内のコナミスポーツ本店では、リオ五輪に出場する所属選手の壮行会が行われた。体操の内村航平、加藤凌平ら4人と競泳の藤井、貴田裕美の2人が出席。藤井は控室での体操陣の仲のよさに、悲願の団体金への強い思いを感じたという。

 31歳で臨む3度目の五輪で、藤井は新たな役割を担っている。「初出場が多いので、周りに気を配りたい。若い選手が遠慮してチームが変な緊張感で固まることはよくない。レース前はリラックスした雰囲気にして、応援で少しでも力になりたい」

 積極的にコミュニケーションをとろうとしているのが、15歳の池江璃花子、今井月ら若手選手だ。倍以上も年が違う、しかも女の子。「使っている言葉がわからなくて『どういう意味?』と聞くと『知らないんですか』って言われて。それをわざと使ってみたらいじられる。語尾になんか変な言葉をつけてて『今はこれが普通ですよ。知らないんですか』って言われちゃう」と苦笑いする。「特に今井はやばいですね。みんなから、僕は今井に甘いって怒られる」と、物おじしない10代にどうやらいじられまくっているようだ。

 ただ、これには藤井なりの目的がある。「日常的にいかに仲良くなるかは、いかにお互いのいいところを見つけられるかということ。このチームにいて楽しいなと思えたらいい」

 ラスト五輪と明言しているリオは、自身にとって初めて北島さんのいない五輪になる。研究熱心で競泳を理論的に語れるベテランが最後に挑むのは、正解のない「チーム力の結集」という大仕事だ。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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