【芸能】八代亜紀 ブルースへの本気度

 “演歌の女王”とも呼ばれる歌手・八代亜紀(65)のブルースライブを聴く機会があった。今回のライブは昨年10月に発売した初のブルースアルバム「哀歌-aiuta-」の集大成となるもの。あの八代のハスキーボイスでブルースを歌うとどうなるか、興味津々だったが、ライブは予想を超える面白さだった。

 八代のブルースにかける本気度は、録音前から分かっていた。昨年7月に“ブルースの本場”米メンフィスに出向き、修行を積んでいる。ライブはルイ・アームストロング(サッチモ)やスティーヴィー・ワンダーらがカバーした「セントルイス・ブルース」でスタート。2曲目に昨年亡くなった“ブルースの巨人”B.B.キングの「ザ・スリル・イズ・ゴーン」を歌唱し、その後で800人のファンに米国修行の模様を報告した。

 「去年メンフィスへ行ったのよ。ミシシッピのB.B.キングのお墓へも行ったわ。まだちゃんとできていなくて、土まんじゅうみたいのがあるだけだったけど。特別に見せてもらったわ」

 あの“スローハンド”エリック・クラプトンが共演を強く望んだB.Bキング。その願いはアルバム「ライディン・ウィズ・ザ・キング」で結実するが、そのB.B.キングの墓参りができてしまう八代がうらやましい限りだ。

 本場のブルースだけではない。日本のブルースというより、歌謡曲も“ブルース化”して披露。特に淡谷のり子で知られる「別れのブルース」は絶品。ソプラノの美声を生かした淡谷とは好対照で八代の「別れのブルース」はハスキーでズドンとくる感じ。「夢は夜ひらく」「あなたのブルース」などの“暗い曲”も歌唱力がある八代が歌うと違った雰囲気になっていた。

 八代のヒット曲「雨の慕情」「もう一度逢いたい」「舟唄」もブルースバージョンで披露されたが、極めつけはこの曲だろう。アルバムにはロバート・ジョンソンの「スイート・ホーム・シカゴ」を故郷の熊本に置き換え日本語で歌った「スイート・ホーム・クマモト」も収録されている。歌詞には「くまモン」「新幹線・さくら」「球磨川」「阿蘇」「不知火海」といった熊本にまつわる言葉が多数登場する。

 これが4月の「平成28年熊本地震」で大きな被害を受けた故郷の“応援ソング”となったのだ。八代は6月18~19日に地震発生後、初めて熊本入りし、歌で被災地を慰問した。八代は「この曲を歌ったら、みんな『カモン』『カモン』と叫んでくれて。歌なんか歌ってる場合かと心配したけど、楽しんでもらって安心した。この曲が応援ソングになったのよ」と笑った。

 ブルースの基本は“泣かないために笑う”ことだという。八代の「スイート・ホーム・クマモト」こそ真のブルースと言えるのかもしれない。

 (デイリースポーツ・木村浩治)

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