【サッカー】U23ピッチ外でも後押し

 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23(23歳以下)アジア選手権(1月12~30日、カタール・ドーハ)で、6大会連続10度目の五輪出場権を獲得するとともに、初優勝でアジアの頂点に立ったU-23日本代表。“勝てない世代”と言われ続けたリオ世代(1993年1月1日以降生まれ)の逆襲の陰には、手倉森誠監督(48)の手腕や選手の奮闘はもちろん、ピッチ外でも様々な後押しがあった。

 昨年12月の石垣島合宿初日、早川直樹コンディショニングコーチ(52)は国立スポーツ科学センター(JISS)のスタッフ4人を招き、血中の乳酸濃度を測定した。試合出場時間や選手の疲労度によって個別に負荷を調節。尿、唾液の検査も実施し、選手のコンディションを詳細に把握した。

 ストレスで増加するホルモン「コルチゾール」を測る唾液検査は大会期間中も毎日行われ、選手のストレスを可視化。試合に出場しない選手にも「3日に1回ペースで体に刺激を入れる」(早川氏)など、綿密な体調管理で決勝トーナメントにピークを合わせることに成功した。

 最終予選ではチームの全15得点中9得点が後半15分以降に、準々決勝からは全8得点中、実に7得点が後半20分以降に生まれ、コンディショニングで他国を圧倒した。

 食のサポートも大きかった。手倉森監督の要望でA代表専属の西芳照シェフ(54)を帯同。宿舎での食事にはバイキング形式の料理の他に、ハンバーグなど西シェフの料理が3品ほど並んだ。

 試合後にはおにぎりやカレーで栄養補充。延長の末、準々決勝を突破したDF岩波は「120分間走れたのは西さんのご飯おかげ」と頭を下げた。U-15代表のフィリピン遠征で初めて海外に行った際、食事で体調を崩した経験もあるだけに、食の重要性が身にしみていた。手倉森監督も「西さんのご飯がなかったらどうなっていたか」と感謝が尽きなかった。「チームが試合に勝った時にやりがいを感じる。やっていて良かったと思う瞬間」と話す西シェフを、最高の結果でねぎらった。

 大会期間中にはMF南野拓実(21)=ザルツブルク、矢島慎也(22)=岡山、大島僚太(23)=川崎、GK櫛引政敏(23)=鹿島=と、大島と同じ誕生日の西シェフを加えた5人が誕生日を迎えた。宿舎での誕生会ではいつもDF三竿健斗(19)=鹿島=が一発芸で場を盛り上げた。“癒やし系”三竿の“芸風”について取材に応える時、どの選手も最終予選の緊張を忘れたかのように笑みを浮かべ、リラックスした様子だった。

 表彰式で三竿はチームメートに勧められ、優勝カップを高々と掲げた。「いいのかなと思ったけど、みんなが『行け』と言うから」と恐縮していたが、出場1試合とはいえ、三竿の貢献度をチームメートこそが実感していた証だった。

 ウイニングランでは、ザルツブルクの要請で準決勝後に離脱した南野のユニホームを着た。「拓実君も決勝に出たかったと思う。チームが一つになって戦ったという意味」。チーム一丸の精神は最年少にまで行き届いていた。

 宿舎のリラックスルームには、北海道名菓“白い恋人”が置かれていた。贈り主はFW荒野拓磨(22)=札幌。昨年末の石垣島合宿に参加しながら、最終予選メンバーから漏れていた。無念を押し隠し、遠く日本からチームを思う荒野の行動を、意気に感じない選手はいない。「ここに来られなかった選手の分も」と誰もが口をそろえて戦った。

 日本サッカーの総合力の勝利だった。ピッチの11人だけでは勝てない。ベンチも含めた23人、裏方のスタッフ、そしてメンバー外となった選手も。全ての後押しが一体となって推進力を生み、日本を五輪出場とアジア王者へと押し上げた。

 「今までで一番のチームでした」。決勝の前日、GK杉本大地(22)=徳島=は優勝を確信していたかのように笑った。(デイリースポーツ・山本直弘)

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