【野球】躍進アストロズ支える日本人

 今年もメジャーリーグに日本から新たに前田健太投手が挑戦する。マーリンズ・イチローの16年目を筆頭に岩隈、川崎、田沢、青木、上原らが異国の地で戦うことになる。

 そんな中、もう一人の“メジャーリーガー”ヒューストン・アストロズの岡克己セラピスト(トレーナー)は9年目のシーズンを迎えようとしている。

 08年に松井稼頭央をサポートするべく渡米。当時の英語力は「中1くらい」だったというが、施術は「マジックハンド」とチームメートから言われ、高い評価を受けた。松井が帰国後も球団からオファーが届き、以来、チームを支え続けている。

 意思疎通はボディーランゲージをフルに駆使。英語を覚える代わりにチームに日本語を浸透させた。チームメートは岡氏を見ると「ういっす!」と日本流のあいさつをする。ただ、若手のカルロス・コレア内野手は「きょうはノーういっす」と首を振る。岡氏は「アイツは使い方を間違えている。体調のことだと思ってるみたい」と笑い飛ばした。

 その岡氏がサポートするアストロズが昨季、大躍進を遂げた。2011年から3年連続の100敗以上。特にアメリカンリーグへ移った2013年は162試合で111敗、勝率・315という厳しいシーズンを過ごした。そのチームが10年ぶりの地区シリーズ進出を果たした。

 快進撃を振り返った。4月後半から10連勝で一気に首位に躍り出た。

 「最初はそのうち落ちるんちゃうか。と選手たちと冗談を言い合っていた。キャンプから若い有望な選手が多くて、もしかしたらいい勝負できるんちゃうかというのはあった。ただ、勝っていくうちに順調過ぎて“こんなにうまくいくわけない”と思うようになっていた」

 これはメジャーのドラフト制度によるところが大きい。前年の下位チームからウエーバー順で指名できる。3年連続100敗のアストロズはその年のトップ選手を獲得できた。コレアらが主力選手に成長したことで躍進への原動力になった。

 秘める力は大きいが経験はない。優勝争いの日々、シーズンが佳境を迎えるにつれて岡氏の日常にも変化が見られるようになった。

 「自宅で朝、目が覚めると吐き気がした。ワンデー(ワイルドカード進出決定戦)前は全然、寝られなかった。毎日が負けたら終わり。自分がゲームに出るわけでもないのに、苦しかった。これがプレッシャーなんだと思った。本当にしんどかった」

 若い選手たちも同様にプレッシャーを感じていたという。ただ、球場に来て、クラブハウスに入るといつものみんなになっていた。「勝つぞ!みたいな雰囲気。若さでしょうね」。

 このころ、岡氏は旧知の田口壮氏(現オリックス2軍監督)に1本のメールを送っていた。ヤンキースとの決定戦の前日だ。

 「日本中を敵に回して頑張ります」

 ヤンキースの先発は田中将大投手だった。難敵だったが若いチームの勢いが勝った。本塁打攻勢で見事にKO。10年ぶりの地区シリーズ進出を決めた。残念ながらワールドシリーズ進出には手が届かなかったが、来季以降にも大きな希望が持てるシーズンとなった。

 岡氏は「若い選手が多い。去年と同じように勢いに乗ってくれたら楽しみですね」と話す。9度目のシーズンへ期待感はこれまで以上に大きいようだ。

 ちなみに現在の英語力は「中1の秋くらいかな」と笑った。(デイリースポーツ・達野淳司)

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