【レース】競馬界が育てる「未来」の芽

 「将来の夢は何ですか?」

 幼少期に、誰もが一度は聞かれたことがあるはずだ。スポーツ選手、教師、キャビンアテンダント、歌手、モデル…。答えはさまざまだろうが、残念ながら騎手や調教師、厩務員と回答する子どもは、例に挙げた職業と比較すると、少ないように感じる。

 以前、福永祐一騎手は「小さいころに野球選手やサッカー選手に憧れるように、1人でも多くの子どもたちが自然と“騎手になりたい”と目指すようになれば」と語っていた。確かに、将来的な競技全体の活性化やレベルの向上という観点から見れば“未来の担い手”である子どもは大切な存在だ。福永騎手は実際、小学校の教壇に立って特別授業を行い、そのきっかけ作りにも尽力している。

 JRAは10月中旬、兵庫県西宮市の「キッザニア甲子園」にホースパークパビリオンをオープンする。実物大のロボットを使い、乗馬や、馬の世話をする厩務員、馬の健康管理をする獣医師の職業体験ができるという。ブラッシングや蹄の手入れに加え、検温、聴診、触診、レントゲン検査後に症状に合わせて治療…。自分が子どものころに、こういう施設があったら-と、うらやましくなった。

 仕事を知って身近に感じてこそ、その職業への憧れが芽生えるというもの。私もいとこがやっていたテレビゲームを通じて競馬を知り、大学時代には阪神競馬場や京都競馬場に足しげく通い、レースの迫力やその裏側にあるドラマに魅了された。今、こうして競馬記者として働いているのは、幼少期から10代の体験が大きい。

 高齢化社会の波は、競馬ファンにも例外なく押し寄せている。無論、今のファンも大切にすべきだが、これから、を支えてくれる子どもに目を向けることも必要不可欠だろう。騎手や調教師、厩務員や獣医を志す若者が増えれば、自然と競技の裾野は広がっていくのでは、と思う。

 馬や、馬関係の職業に触れられる施設、イベントが増えれば、競馬ファンになるための入口作りにもつながる。キッザニア甲子園のホースパークパビリオンなどのハード面が成功を収め、競馬のイベントが増え、多くの人々が馬を日常的で自然な存在として感じられれば。競馬はより身近で、かけがえのないものとして、世の中に受け入れられるはずだ。(デイリースポーツ・大西修平)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス