【レース】美浦坂路は上級馬に不向き?

 今年の日本ダービーはドゥラメンテが圧倒的な強さでV。関東馬の優勝は09年のロジユニヴァース以来6年ぶり。西高東低と言われてしばらくたつが、今年は美浦が栗東に一矢を報いた形となった。

 ただ、今年の重賞勝利数は22日現在、西57勝に対して、東30勝と大きく水をあけられている。注目すべきはその勝利馬の最終追い切りコースだ。最終追い切りを坂路で行った勝ち馬の頭数は、西の34頭(トラックコース追い23頭)に対して、東はなんと4頭(トラックコース追い26頭)しかいない。これは極論かもしれないが、美浦の坂路は“上級クラス馬の最終追い切りの場に適していない”という見方もできてしまう。美浦坂路と栗東坂路の違いはどこにあるのだろうか。

 美浦坂路は昨年の1~3月にかけて馬場改修工事を行い、以前よりも負荷がかかるように普段から馬場水分を多めに調整している。このために、晴れているときはいいのだが、ひと雨降ると馬場が悪化して脚を取られる馬が続出。故障の危険を避けるためにWコースや、ポリトラックの平地コースに追い切り場所に変更する陣営が少なくない。負荷がかかり過ぎるため、時計の出方も全く変わるようになる。普段は4F54秒くらいで動けるような馬でも、雨が降ると4F58秒から59秒ぐらいで脚色が一杯になってしまう。これでは調教師は時計を指示することができず、馬券を検討するファンも、坂路の時計で調子を判断するのは困難になる。

 馬によっては脚部に何らかの弱点があり、坂路でしか調教ができない馬もいる。記録的な大雨の影響で美浦坂路が閉鎖された9月11日。脚部不安の馬を抱える、ある調教師は「脚元を考えて坂路でしか追い切りができないのに、閉鎖されてしまっては…」と頭を抱えていた。

 こうした不満を解消するためにも、ここはひとつ、美浦坂路に屋根を付けてみるのはどうだろう。現在、北海道の大手育成牧場では、坂路に屋根を付けているところがある。これは冬季に雪が降ると調教ができなくなるためなのだが、美浦も同じこと。負荷をかけやすくするのはいいが、雨が降るたびにグチャグチャになり、調教ができなくなってしまっては身もふたもない。屋根を付ければ、少なくとも天候に左右される馬場ではなくなるはずだ。

 もちろん、全長1200メートルの坂路に屋根をつけるとなると多額の工事費が発生するが、JRAは『世界に通用する馬づくり』を掲げている以上、そこに投資するお金を惜しむべきではないし、強い馬づくりのためなら、決して無駄な出費ではないと私は思う。

 美浦は栗東の坂路と違い、人工的に作った坂だという。そのために馬場を安定させるのが難しいと言われている。それならば、なおさら策を打つべきだ。ある調教師は「とにかく“安全な馬場”にしてほしい」と強く訴えていた。JRAは“調教をしやすく、結果的にファンにも分かりやすい”調教コースを提供することが必要ではないだろうか。(デイリースポーツ・刀根善郎)

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