バラード曲ヒット誕生しない理由は?

 2015年も折り返し、オリコンなどの音楽チャートでは上半期ヒットランキングが発表された。今年前半に最も売れた曲の一覧を眺めていて感じたこと。アップテンポの曲ばかりで、バラードがほとんどない-。

 あらためてオリコン上半期チャート上位50曲を整理すると、乃木坂46を含むAKBグループが7曲、嵐やKis-My-Ft2らジャニーズ勢が14曲、K-POP8曲、EXILE TRIBEが5曲と、コアなファンを持つアーティストの強さが目立つ。それゆえ、彼らの趨勢(すうせい)が、トレンドを大きく左右してしまうのは事実。とはいえ、51位以下に、世代を超えたバラードヒット曲があったか、といえば、すぐにあげるのは難しい。

 “バラード離れ”の傾向は、今年上半期に限った話ではない。2014年の年間チャートに目を移しても、状況は変わらない。強いて言えば、映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌となった秦基博の「ひまわりの約束」が、今年上半期のカラオケリクエストランキング(DAM調べ)でも2位に入っているおり、永続的に愛される歌となる気配を見せているぐらいだ。

 10年前のチャートと比較してみると、さらに一目瞭然だ。2004年の年間1位は平井堅の「瞳を閉じて」。2位はMr.Childrenの「Sign」。3位以下は「Jupiter」(平原綾香)、4位「花」(オレンジレンジ)、5位「掌」(Mr.Children)…と、スローなバラード曲が優勢を占めていた。

 近年、売り上げではふるわないバラードだが、“歌う曲”としての人気は根強い。先述のカラオケランキングでは、2位の秦のほか、4位に中島みゆきの「糸」(92年発売)、10位に一青窈「ハナミズキ」(04年)が入っている。気持ちよく情感たっぷりに声を張り上げることでストレス解消する経験は、誰もが持っているだろう。

 それなら、なぜ新たなヒットバラードが生まれていないのはなぜか。何人かの音楽関係者に聞いてみた。「大人数のグループが、ダンスをしながら歌うスタイルが主流のため、パフォーマンスにそぐわない」「EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を中心にダンスミュージックが流行しているため」と、さまざまに答えてくれるが、決定的な理由は見えてこない。

 あるレコード会社関係者は「株価も上がって、景気上昇傾向だから、アップテンポの曲が好まれている」と指摘した。まさか?とちょっと信じがたい気もしたが、実際、経済学者の保原伸弘氏は、流行歌と経済状況の相関関係を分析した論文「ヒット曲は景気を語る(唄う)か? 昭和と平成におけるヒット曲=流行歌の調性、テンポと経済状況の関係」(09年)の中で、1980年代のバブル期にヒット曲のテンポが上がり、バブル崩壊とともにテンポが遅くなったと解析している。イケイケな経済状況が、音楽の視聴気分を左右することもあるのかもしれない。

 結論をいえば、“バラード不況”は景気を含めたさまざまなファクターに起因しているというのが、きっと正解なのだろう。ただいえることは、一音楽ファンとして、心を揺さぶられるような新しいバラード曲にこれからも出合いたい。そして、その曲が広く共有される意味で、ヒットチャートを大いににぎわせてほしいと思う。(デイリースポーツ・杉村峰達)

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