大相撲~個性派ぞろいのニューフェース

 1月の初場所に続いて3月の春場所も、15日間連続で満員御礼となり、大相撲人気は完全に復活したといっていいだろう。5月10日に初日を迎える夏場所(東京・両国国技館)の前売りも順調で、3場所連続で15日間通じての満員となりそうだ。人気が盛り上がれば、新たな話題が次々と出てくるもので、春場所で初土俵を踏んだニューフェースたちが実に個性派ぞろい。将来が楽しみなスター候補たちばかりだ。

 まずは昨年のアマ・学生横綱の2冠に輝いた東洋大出身の御嶽海(みたけうみ、本名・大道久司、長野県出身、出羽海部屋)は、幕下10枚目格付け出しでプロデビュー。出だしは緊張感ありありの内容で、2番相撲で痛恨の黒星を喫してしまった。しかし、後半にいくにつれて本領を発揮するようになり6勝1敗の好成績。得意は立ち合いでの鋭い当たりからの突き押しだが、四つ相撲にも十分に対応できるセンスの良さも見せた。特に勝ち越しを決めた宝香鵬(宮城野部屋)戦でも、不得手な四つ相撲になりながら、土俵際でうまく回り込んで最後はタイミングよく突き落としを決めてみせた。

 「相手の動きが見えていたし、体がよく動いてくれたと思います」と給金を直してホッとした表情だったが、アマ時代とは違う立ち合いに慣れていない状況でも、きっちり白星をつかみ取るあたりはさすが。目標は元大関武双山(現藤島親方)のような馬力で相手を一気に持って行くような取り口。幕下上位に躍進する夏場所では、さらに進化した姿を見せてくれるはず。地元といえる7月の名古屋場所で十両に昇進した晴れ姿を見せる可能性はかなり高いだろう。

 次はやはり関学大から初めて大相撲入りした宇良(うら、本名・宇良和輝、大阪府出身、木瀬部屋)をクローズアップしないわけにはいかない。奇手・居反(いぞ)りや足取りなどアクロバティックな相撲内容が、大学時代からディープなファンに注目され、テレビのバラエティー番組で取り上げられて一躍有名になった。2月のプロ入り入門会見には100人以上のメディアが駆け付けるなど、フィーバーぶりは一気に過熱した。

 春場所2日目の前相撲では、立ち合いから相手を圧倒して右からの突き落としで快勝。鮮やかに白星デビューを飾った。とはいえ、平日の午前8時30分、前相撲では異例ともいえる大勢のメディアと観客が詰めかけ、改めて注目度の高さを実証した。約2秒での速攻劇にも、「緊張はしなかった。いい流れで相撲が取れました」と強心臓ぶりを見せつけた。現在は正攻法に磨きをかけることに重点を置いており、「(居反りは)出す時は出しますが、今は封印しています。師匠(元幕内肥後ノ海の木瀬親方)からは自分の相撲を貫けと言われています」と話す。入門後も体重が増加しており、着々と“プロ仕様”に変貌中。奇想天外な決まり手を繰り出す業師が、これからどんなテクニシャンぶりを発揮してくれるのか。ますます目が離せなくなりそうだ。

 この2人に注目度ではやや遅れてしまったものの、日体大から八角部屋に入門した大輝(だいき、本名・中村大輝、埼玉県出身)も将来有望な大器。2年時に学生横綱、3年時に国体成年Aというビッグタイトルを獲得したが大学卒業を優先した。タイトルを取ってから1年以内にプロ入りしていれば、幕下付け出しの資格を得ていたが、大学の最終学年ではタイトルを獲得することはできなかったため、前相撲からのスタートとなった。

 師匠の八角親方(元横綱北勝海)は妥協のない稽古で角界の頂点を極めただけに、「今までは力だけで勝てたが、これからは動きで勝つことも覚えないといけない。苦しんで勝てば、それが自分の身についていくはず」と実に的確なアドバイスを送った。大輝も前相撲から取ることについて、「神様がくれた試練だと思う」と気にする様子はない。春場所3日目に前相撲で初めてプロの土俵に上がった3月10日は、日体大の卒業式の日でもあった。「この日にプロとしてのスタートを切ったのも、何かの運命だと思う」と感慨深げに言葉に力を込めた。学生横綱に輝いたインカレでは、準決勝で遠藤(当時は日大)に快勝しているように、一発の破壊力には大きな魅力を秘めている。

 そして、ボディービル出身という異色の新弟子・朝山端(あさやまばな、本名・山端克忠、兵庫県出身、高砂部屋)は、右足のほうかしき炎のため高熱が出て入院するアクシデントがあり、春場所8日目の前相撲でようやく初土俵を踏んだ。6日間の入院で体重が約10キロも落ちたそうだが、立ち合いから頭で当たって一気の押し出して完勝。ボディービルで鍛え上げられた約120キロの浅黒い肉体は、新弟子の中でも際だって目立つ。「まず自分のレベルを上げること。同期生とは切磋琢磨して、並べるように頑張りたい」と意気込みを示した。

 阪神タイガースで左の中継ぎとして活躍している島本浩也投手とは福知山成美高で一緒に寮で生活していたという。育成枠出身から支配下登録へとステップアップした同窓生の存在が、いい刺激になっている。現在は連絡は取り合っていないそうだが、1日でも早く出世して肩を並べたいところだろう。

 このほかにも、春場所の新弟子検査に合格しながら、ビザの関係で夏場所で前相撲に臨むカナダ出身のブロディク・ヘンダーソン(錦戸部屋)も、ケタ違いの巨体を誇るだけに、どんな相撲を取るのか期待がふくらむ。彼らの出世レースが、これから本当に楽しみだ。(デイリースポーツ・北島稔大)

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