日本ハム中田のスラッガーとしての矜持

 あぁ、凡打か-。20日のオープン戦、巨人対日本ハム(東京ドーム)の七回1死。一塁へ駆け出す日本ハム・中田翔を見ながらそう思った。なぜならこの写真のように、思い切りバットをたたきつけたからだ。

 カメラマンはもちろん、打球の行方も追う。ただ中田のように球界を代表するスラッガーであればあるほど、打った後のガッツポーズなどを狙いにいくことが多く、その場合は追わない(正確に言えば、追えない)。一挙手一投足に集中するからだ。

 だが結果は、快音を残して左前打。悔しがる必要はなかったはずだ。それなのに…。後ほど映像で確認すると、その理由がわかった。

 明らかなチャンスボール。コースも高さも甘かった。中田ほどの選手がそれを逃すはずはない。当然のようにたやすく安打にした。だが裏を返せば、本塁打にはできなかったということ。そこに中田翔というスラッガーの矜持を見た。

 この行為を見て「道具を大切にしないのはけしからん」と思うのも否定はしない。だが、それだけ1球に懸ける思いが強いとも取れないだろうか。

 これが公式戦で1点ビハインドの九回、2死走者なしの場面だったとする。そこで一発放り込むことができるかどうかは、勝敗に直結しかねない。単打だけでは次打者以降が凡退すればそこで敗れてしまう。好球必打を実践できなければ、主砲としての役割を果たしたとは言えない-。中田の行動から、心の声が聞こえるようだった。たかがオープン戦、されどオープン戦だ。

 次の打席、8回無死満塁のビッグチャンス。さらに集中力を高めた中田は先ほどのうっぷんを晴らすかのように2点適時二塁打を放ち、4番の面目躍如。きっちり走者をかえし、結果を残してみせた。1打席1打席、1球1球に命を燃やす。それはきっと、見る人の心を動かす“中田の魂”そのものだろう。

 中田はかねて「取れるものは取りたい」と三冠王に意欲を燃やしている。自分のためだけでなく「大きく強くなるためにも引っ張っていきたい」とチームの要としての自覚も十分だ。

 シーズンはいよいよ27日に開幕。日本ハムは大久保新監督率いる楽天と相まみえる。今季はスタートから一段とレベルアップしたスラッガー・中田翔が見られるはずだ。

(写真と文=デイリースポーツ・北野将市)

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