来年は夏の札幌!方向定まらぬWSJS

 どうも方向性が定まらないようだ。ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)が、来年は夏の札幌で開催される。

 世界のトップクラスと日本を代表する騎手による腕比べ。4つのレースをポイント制で争う国際騎手招待競走は1987年にスタートし、28回目を迎えた今年は先週、東京競馬場で行われた。

 第1回はキャッシュ・アスムッセン騎手が優勝。日本では第1回ジャパンCをメアジードーツで制し、フランスでは5度のリーディングを獲得。年間最多勝記録を15年間破られなかった伝説の騎手が、WSJSで日本中にその名を知らしめた。当時15歳だった私も「かっこええなぁ」とうなった一人だ。

 第2回からは8年連続で日本人が優勝。第4回は海外女性騎手として初来日したジュリー・クローン騎手が、そして第8回には地方競馬所属の初優勝として石崎隆之騎手が注目を浴びた。誰が来日するのか?どんな追い方で馬を動かすのか?とにかく、ワクワクできる特別な2日間だった。

 2001年からは公平性を保つため、JRAが騎乗馬のランクをA~Dの4段階評価で発表し、各騎手へ振り分けられるようになった。そして12年からはそれまでの阪神だけでなく東京、阪神と東西交互で開催されている。ただ、そんな工夫を凝らしてもここ数年は盛り上がりに欠ける印象だ。

 その打開策だろう。夏の札幌で開催するという“サプライズ”が発表された。ただ、これには首をかしげたくなる。実際、厩舎関係者を取材しても否定的な意見が多い。欧州は競馬シーズンの真っただ中。トップ騎手が参加できるかどうかも微妙だ。

 先週のWSJSは16人が参戦した。ただ、札幌の出走可能頭数で16頭が出走できるのは芝だと1200メートル、2000メートルだけ。ダートは1700メートルの13頭が最大だ。しかも、夏の札幌開催は馬が集まらない。今年の第1回、第2回の札幌競馬で特別レースは44鞍が組まれたが、フルゲートに満たないレースが22鞍あった。WSJSにダートも含まれることを考えれば、参加騎手は最大で13人ということに…これでは規模が縮小されることになる。

 肯定的な意見もある。福永祐一騎手はこう話す。「昔はもっと華やかだった。外国人ジョッキーも珍しくて、注目度も高かったからね。今はスポーツ紙の扱いも小さい。そりゃ、ジャパンCの日に開催するとこうなるよ。そういう意味ではG1のない夏場のローカル開催でやるっていうのもいいんじゃないかなと思う」。メリットもあるというわけだ。

 クリストフ・スミヨン騎手、ライアン・ムーア騎手、クリストフ・ルメール騎手など、今は短期免許を取得して海外のトップが次々とやってくる。馬柱に片仮名の騎手がない時期などない。外国人騎手に新鮮味を求めるのは難しいのかもしれない。

 スポーツ紙の扱いに関してはどうか。今年で言えば、月曜に競馬が開催された影響から、ジャパンC出走馬は木曜追いに。週中、WSJSを紙面で盛り上げることは不可能だった。ただ、変則日程ではなくても、福永騎手が指摘するように近年は扱いが小さい。00年までは来日した外国人騎手が参加して騎乗馬の公開抽選が行われていたが、今はそんなショーアップもされていない。マスコミも盛り上げようがない、というのが実情だ。

 WSJS出場騎手の選考方法も見直しが予想される。来夏の札幌開催だと、選考基準は難しい。上半期の成績で選考するのも違う。07年から採用されたサマージョッキーズシリーズ優勝騎手に与えられる参加資格もどうなるのか。「前年の成績で選べばいいと思うよ。ただこの際、選考方法も考え直した方がいいだろうね」とは福永騎手だ。個人的には勝ち鞍だけではなく、勝率や連対率、そして主要G1の優勝騎手に参加資格を与えるのも悪くないと思う。来夏に開催されるWSJSは盛り上がるのだろうか。JRAのアイデアにも注目したい。(デイリースポーツ・井上達也)

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