ローカル競馬場を活性化させるには…

 この秋、スプリンターズSの取材で初めて新潟競馬場に足を運んだ。ビリーヴが制した02年スプリンターズS以来、12年ぶりのG1開催。いたるところにポスターが張られ、街全体で大レースを楽しもうとする雰囲気が感じられた。先日、盛岡競馬場で行われたJBC競争も、取材に行った先輩記者によると大盛況に終わったとのことだ。

 新潟のタクシー運転手は「僕らにとってもありがたいんだよ。遠くからレースを見にきて、タクシーを使ってくれる人もいるからね」とハンドルを握りながら、熱っぽく語ってくれた。そしてG1の開催効果は、地元経済だけにとどまらないという。「大きなレースは都会でやるイメージ。こうして自分の住む街でやってくれると、なんかうれしいというか、愛着が湧くよね」と声を弾ませていた。

 今や電話投票やインターネットを利用し、どこでも馬券が買える時代だ。観客動員増と売り上げ増が、必ずしもリンクしなくなってきている。大都市で大レースを開催することに、昔ほどの意味はなくなったのかもしれない。そんな時代だからこそ、こうした地方都市に住むファンの獲得&拡大が、実はスポーツや公営競技の発展に、最も重要な要素という気がしている。

 プロ野球では、パリーグの球団が本拠地を地方に移転し、成功を収めた。Jリーグの「地域に根ざしたスポーツクラブ」の理念も、開幕から20年以上が経過し、着実に定着しつつある。スポーツや音楽、ファッションなど、刺激的な興行がめじろ押しの都会に比べ、大イベントに対する“飢え”は、むしろ地方の方が強くなっているのかもしれない。

 競馬におけるローカル活性化を考えるなら、以前から言われる「札幌記念をG1に!」というのも、ひとつの案だろう。ただ、個人的には、芝の1200メートル、もしくは1800メートルか、2000メートルのG1を、JRAの各競馬場で持ち回り開催してほしいと思っている。これなら全10場で設定可能な条件だし、北海道から九州まで全国のファンが“地元”でG1観戦できるからだ。

 既存のレースを利用してもいいし、新たに設立してもいい。番組の大幅な見直しが必要かもしれないが、やれないことはないと思う。私案だが、例えば大レースの少ない夏に、現存するサマースプリントシリーズやサマー2000シリーズの王者を決めるG1として、同日開催するのはどうだろうか。今年は小倉で、来年は札幌で…と持ち回りにすれば、全国でG1を楽しむ機会が得られるはずだ。

 地方競馬の一大イベントでもあるJBC競走は、盛岡、船橋、大井、川崎、名古屋、金沢、園田と、会場を変えながら歴史を重ね、今や秋競馬の風物詩のひとつに成長した。“おらが町のG1”は、地方都市経済への貢献に加え、新たなファン開拓の一助となる可能性も秘めている。

 プロ野球ファンが、地元の球団から選出された選手をWBCで応援する。サッカーのサポーターが、W杯で地元チームの選手に声援を送る。五輪で、地元出身選手の活躍に涙する。競馬でも、“おらが町のG1”で育った馬が、世界に挑む姿に胸を躍らせるファンはきっと多いはずだ。

 人々の心に潜在的にあるとされる母国愛と地元愛をうまくミックスできれば、競馬は今以上に人や地域に根ざした文化へと成長していくに違いない。私は、競馬にはもっと多くの人々の心を熱くできる魅力を感じている。

(デイリースポーツ・大西修平)

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