電撃辞任 野村チルドレンの奮起信じる

 クライマックス・シリーズ(CS)ファーストS前に飛び込んだ驚きのニュースだった。広島の野村謙二郎監督が、突然の辞任。すべての日程が終了した後ならまだしも、これから決戦という時の辞任表明。「すべて終わってからのご報告にさせていただこうと思ってたが、ドラフトや今後の人事もありますので、このタイミングになった」と説明したが、CSでの戦いに影響するのは間違いないだろう。

 これが意図的ではないとしても、個人的にはいい方向に影響すると思っている。チームはシーズン終盤に首位争いから脱落し、最終戦で巨人に敗れて2位から3位に転落。明らかにチーム状態は下降線をたどっていただけに、この“監督辞任劇”で、選手の中に何かが変わる可能性が出てきた。

 球団首脳も「発奮するのは当たり前」と選手の奮起を期待している。選手も野村監督の突然の辞任に戸惑うとともに、「最後に監督を男にする」という声が上がっている。

 今季11勝9敗と納得いかない成績で終えた前田は「監督を胴上げして終われば一番。(日本シリーズを)勝って胴上げして終われれば」と声を上げた。大瀬良も「CSでは頑張って花を添えられるような投球をできれば」と気合が入った様子。丸も「恩返しするじゃないけど、CSでいい結果を残したい。1日でも長く一緒に野球をやりたい」と話した。

 現在のカープは野村監督が作り上げたチームだ。丸、菊池をはじめ、堂林、会沢、鈴木誠や、伸び悩んでいた松山、新人の田中ら経験の浅い野手を積極的に起用し、試合で経験を積ませた。投手陣も新人を思いきって使った。今村、福井、野村、大瀬良ら“ドラ1組”はもちろん、戸田、中崎、中田の若手にもチャンスを与え、結果が出ると1軍で活躍の場を与えた。

 今季で就任5年目だが、年を追うごとにチームは進化していった。今季首位争いを演じるまでになったのは、“野村チルドレン”のおかげだ。力があっても試合に出なければ、その力は発揮できない。そういう意味でも、若い選手たちは野村監督に感謝している。

 今季2年目の鈴木誠が1軍に昇格し、結果を出した。潜在的な能力は高く、将来のスター候補として期待される逸材。野村監督は鈴木誠の新人時代から「何とか育ててあげたい」という思いが強く、それだけに厳しく指導に当たっていた。

 これに対し、鈴木誠は「僕は怒られると『クソッ』と思うタイプ。だから怒られる方がいい」と野村監督の思いをしっかりと受け止め、「監督のためにも勝ちたい」とプレーしている。

 もちろん、野村監督の起用法に不満を持つベテラン選手や投手もいる。ただ「万年Bクラス」のチームから脱却するためならばと、野村監督は多少の“出血”を覚悟していたはず。結果として2年連続CSに出場するチームに成長させた手腕は見事だった。

 野村監督に有終の美を飾りたい。野村チルドレンは自らを発掘し、育ててくれた恩を返すためにも死力を尽くすのは間違いない。まずは阪神を破って、ファーストS突破。これで勢いが付けば、その先の大番狂わせも見られるかもしれない。(デイリースポーツ・菅藤 学)

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