何が起こるか分からない野球の怖さ

 結果的にこのワンプレーが勝敗を分けた。だからと言って、プロ野球に携わる人間であれば、決して責めることはできないワンプレー。それは9月21日に甲子園で行われた阪神-中日24回戦の九回裏に起こった。

 同点で迎えた2死から守護神の呉昇桓が打席に入った。初球を打って二塁への内野安打で出塁。韓国時代を通じてプロ入り初となる安打に、聖地は大きく沸いた。だが続く梅野は初球の外角スライダーを打って投ゴロ。誰もが攻撃が終わったと思い、大きなため息が起こりかけた。一塁走者の呉も投手・福谷が捕球したシーンを見届けると、走るスピードを緩めた。

 だが次の瞬間、福谷が一塁へ大悪送球。ボールは一塁カメラマン席の前を転々とし、ルナが必死に追いかけた。ここで呉は慌てて再スタートを切ったが、本塁にはかえれず三塁でストップ。サヨナラ機を逸し、高代三塁ベースコーチは「野球人やから。ボールを捕るところまでは見とったけど、ああいうことが起こるわけやから。走っとかなあかん」と言う。

 ただ走者は守護神。万が一、本塁上のクロスプレーで負傷させてしまえば残り試合、さらにはCSにも悪影響を及ぼしてしまう。「もちろん野手なら回してたけど、投手、ましてや守護神なんやから。クロスプレーでケガさせることなんか絶対にできない。タイミング的にも、かえってこれたかどうかは分からんから」と高代コーチは苦渋の表情を浮かべる。

 この場面、打順、継投の巡りを考えても呉を打席に立たせるしかなかった。延長を乗り切るためには呉のイニングまたぎが必要だった。それが予想外のプロ初安打に始まり、ミスをクローズアップさせることになった予想外の悪送球。仕方ないと割り切るしかなかったのが現実だ。

 それでも高代コーチは「注意はしておきます」と明かした。野球だからこそ、ストッパーが打席に立つこともあるし、とんでもないミスが起こることもある。チームは延長の末に敗れ、2位・広島との差は1・5ゲームに開いた。野球は何が起こるか分からない-。その教訓を改めて教えられたシーンだった。

(デイリースポーツ・重松健三)

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