愛媛FCサポーターたちの社会貢献

 5月18日にニンジニアスタジアム(松山市)で行われたJ2愛媛FC‐カマタマーレ讃岐戦で、残念な騒動が起こった。

 愛媛の一部サポーターが讃岐を中傷するフラッグを掲げ、讃岐の選手たちが乗ったバスの進路に飛び出しスタジアム入場を妨害。「無観客試合」の厳罰が下った浦和サポーターによる差別的横断幕問題のあとだったこともあり、この行為は大きな問題に発展した。

 フラッグには「讃岐は邪魔者」という意味の言葉が英語で記されていた。フラッグを掲げたサポーターは徳島(現J1)との「四国ダービー」への思い入れが強く、讃岐戦はダービーとは認めないという意味で「邪魔者」という言葉を使ったようだ。根底には試合を盛り上げようという前向きな意図があったのだろう。ただ、見る人によっては不快感を覚える内容であることは確か。もちろん、バスの進路妨害は危険な行為だ。

 愛媛FCは、フラッグを掲げたサポーター1人を無期限入場禁止、選手バスの通行妨害に関わった5人を9月14日までの計17試合の入場禁止とする処分を発表した。そして5月28日、Jリーグは愛媛FCに対して「厳重注意」の処分を下した。

 村井満チェアマンは「スタジアムが危険であるとの印象を与え、讃岐の選手・スタッフをはじめ、当日スタジアムにご来場いただいた多くのサポーターの皆様に不快な思いをさせてしまった」と、その理由を説明した。浦和問題のあとで厳罰も予想していただけに、処分はそれほど重くはなかったというのが個人的な感想だ。

 仕方ないことかもしれないが、この一件で愛媛サポーター全体のイメージが悪くなってしまうのが残念だ。

 これまで愛媛のサポーターは地域貢献、社会貢献に熱心に取り組んできた。昨年10月には選手やチームスタッフとともに宮城県名取市を訪問。震災で甚大な被害を受けた閖上(ゆりあげ)地区で、行方不明者発見への手がかりを探す「側溝捜索ボランティア」に参加した。4月にもサポーターや選手たちは被災地を訪れ、泥だらけになって活動している。

 また、定期的に自治体などが主催する清掃活動にも積極的に参加している。讃岐戦の騒動によって、こういったことが忘れ去られてしまうなら悲しい。

 12日(日本時間13日)にはW杯ブラジル大会が開幕する。4年に1度の大舞台で各国サポーターは熱狂し、興奮や落胆のあまり行き過ぎた行為に走ることがあるかもしれない。選手たちのプレーだけではなく、良い応援には拍手を、恥ずべき応援にはブーイングを。浦和や愛媛での問題をきっかけに、そんな視点を持つようになったファンも多いのではないだろうか。

 すでに愛媛FCはいくつかの再発防止策を発表し、実行を進めている。サポーターも今回の騒動をきっかけに、より良い応援を目指して努力するだろう。スタジアムにはたくさんの子供たちもいる。このような問題が二度と起こらないことを願っている。

(デイリースポーツ・浜村博文)

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