甲子園球場の「幻の改造計画」とは

 プロ野球阪神タイガースの本拠地だけでなく、高校野球の聖地としての顔を持つ甲子園球場。今年で90周年を迎え、プロ、アマともに戦前から歴史に残る名勝負が何度も繰り広げられてきた。そんな趣を残しつつも、革新的な一面を取り入れようとした07年からのリニューアル工事。だが球団幹部はこんな裏話を明かす。

 「本当はもっとメジャーの良い部分を取り入れて、家族で楽しめるような球場、演出にしたかった」。具体的には内野を総天然芝に変えた上で、緑と黒のコントラストをより鮮明にするプラン。だが春夏の高校野球は約2週間の集中開催で、1日最大4試合を行うため、芝生がもたないという結論に至った。

 今でも高校野球開催後には、外野の天然芝がかなり傷んでいる。定位置付近や内野と外野の境目辺りは、芝がはげた状態になって土が見えている。メジャーのように内外野天然芝にすれば管理費用やコストが増大。それらの事情により、以前と同じ外野のみ天然芝という形式が取られたという。

 さらに同球団幹部は「右中間、左中間席の最上段に巨大ビジョンを置いて、選手の紹介や他球場の途中経過をリアルタイムで流せるようにしたかった。巨人戦がリアルタイムで動けば、ファンもより応援に力が入るかもしれない。設置費用は高いかもしれないけど、十分、広告を募ればペイできると思ったが…」と構想を明かす。

 ただこれも実現には至っていない。内野席の上部に設置してあるライナービジョンについても、当初はかなり球場サイドから抵抗があったと言われている。記者席もメジャーのようにガラス張りのボックスタイプにし、客席の一番上に上げるという案もあったが…。プロ側とアマ側で意見を調整した結果、気温や熱気を肌で感じるために、記者席の仕様や位置は大きく変わらなかったと言われる。

 興行の側面が強いプロ野球を年間60試合超開催する一方、高校野球は教育的な意味合いを残す。いまや春夏の高校野球は欠かせない風物詩。実際に球場の広告費に関しても、高校野球で応援席として使われるアルプス部分の看板使用料が他の設置場所と比較しても高くなっているという。

 「基本的にテレビに映りやすいところが比例して広告料も高くなっている」と明かした球団幹部。野球界でもトップを争う人気を誇る阪神と高校野球‐。そのはざまに揺れながらも、うまくバランスを保つことが求められる。長い歴史を持つ甲子園球場だからこその“はざま”でもある。

(デイリースポーツ・重松健三)

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