国民的助っ人に「失望した」ファン 

 普段は物静かなヤクルト球団事務所に、相次いで電話が鳴った。王貞治(巨人)らが持つシーズン最多本塁打記録を更新したウラディミール・バレンティン外野手(29)が、妻への暴行、監禁の疑いで逮捕されるという衝撃から一夜明けた1月15日。「プロ野球ファンとして失望した」。件数こそ約10件と多くはなかったものの、ファンからは落胆の声が届いた。

 約半世紀ぶりに球史を塗り替えた、あの感動と熱狂から約4カ月。セ・リーグMVPにも選ばれ、大手企業のCMにも起用されるなど、名実ともに「史上最強助っ人」の称号を得たバレンティン。「逮捕」の見出しが躍ることは、ショッキングに他ならなかった。

 現在、保釈が認められたバレ砲は、無罪を主張しており、25日(現地時間24日)に再び出廷することが決まっている。事件の詳細は、今後、明らかになっていくことだろう。ただ、ひとつだけ言えるのは、こうした騒動が起きてしまったという事実だ。偉業達成に水を差してしまった感が、どうしても否めなくなってしまうのだ。

 ある球団関係者も、現段階で事件のすべてが明らかになっていないことを前置きしたうえで、「あれだけの記録を達成したことで、何かあれば以前とは比べものにならないくらい注目されてしまうし、どこにいても常に人の目がある。そのあたりの自覚が足りなかったということは、言えるかもしれない」と話した。

 取材者から見たバレ砲は、これまで怠慢プレーが問題になることはあっても、決して激高したり、キレやすいといったタイプではなかったように思う。報道陣への対応にしても、記録更新が目前に迫った期間に多少のピリピリムードを漂わせたことはあったが、基本的には陽気で友好的。積極的に異国の地に溶け込む姿は、記録達成を後押しさえしていた。

 さらに、バレンティンには、日本球界における王貞治の55号の持つ重みを、外国人という立場から自分なりに理解しようと努める度量もあった。かつてローズ(近鉄)、カブレラ(西武)が新記録に挑みながら、“カベ”に阻まれた時代を経て、日本のプロ野球ファンたちも、そんなバレ砲を素直に祝福した。「国民的助っ人」として認め、プロ野球の新時代への突入を喜んだ。バレンティンは、いわば“聖域”を破ることを許された男ともいえる。それだけに、今回のこの騒動が、非常に残念でならない。

 新記録樹立を経て迎える今季は、ただでさえ注目の集まるシーズンだった。この一件で、バレンティンはさらに高いハードルで勝負を挑まなくてはならなくなった。現時点で、衣笠球団社長が「1日も早くキャンプに合流してもらいたい」と話すように、円満解決を望んでおり、球団は厳罰は下さないものとみられる。今後、日本への渡航が許されれば、これまでどおりヤクルトでプレーすることを希望している。

 逮捕という現実によって、バレンティンはさまざまな視線を浴びることにもなる。背負った重圧は、野球人、社会人としての行動で返していくしかない。今回「失望した」と球団に電話したファンも、きっと、それを待っているはずだ。

(デイリースポーツ・福岡香奈)

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