プロレス人気復活の鍵は力道山スタイル

 新日本プロレスの石井智宏(右)
3枚

 “日本プロレス界の父”力道山の没50年追悼記念興行が、50回目の命日の翌16日に開催され、孫の力(ちから、32)がデビューした。祖父同様に黒いロングタイツを着用して空手チョップを打つ姿に、普段よりも高齢の観客が目立った後楽園ホールが沸いた。

 大会開始前には、力の父で力道山の次男・百田光雄(65)が亡き父の戦いから選定した「力道山ベスト10」が上映された。10位のヘイスタック・カルホーン戦から1位のルー・テーズ戦まで、試合内容はチョップ、キック、タックルなどオーソドックスな技の攻防が主だった。それでも、熱狂は白黒映像から伝わり、この日の観客も食い入るように見つめていた。

 時代とともにリング内は変化した。力道山の他界後もアントニオ猪木参議院議員(70)、故ジャイアント馬場さんら弟子が守り抜いたプロレスは現在、団体が乱立。それぞれで見栄えのいい派手な技の応酬が主流となり、試合前後のパフォーマンスも不可欠となった。次から次へと生まれるカタカナの技名に、ついていけなくなった人も多いはずだ。

 しかし、今年は流れと一線を画すように、シンプルかつ激しい戦いをする新日本・石井智宏(38)の評価が高まり、大日本・関本大介(32)への信頼が揺るぎないものになった。石井はかつて天龍源一郎(63)、長州力(62)の付け人を務めた苦労人。関本は高知・明徳義塾高野球部出身で元横綱朝青龍が同級生。大日本入り後、着実に成長した。

 ともに上背はない(石井170センチ、関本175センチ)が、巨漢相手にもひるむことなく、ゴツゴツとした名勝負を連発。特に見る目が厳しいとされる聖地・後楽園の観客から支持され、大声援を送られる。

 2人の試合は秘蔵映像の力道山のように、どこか懐かしく釘付けになってしまう。殴り殴られ、蹴り蹴られ、頭突きには頭突きでお返しする。石井の垂直落下式ブレーンバスター、岩のような体から放つ関本のぶっこ抜きジャーマンスープレックスは説得力抜群。体を張っている分、勝っても負けても爽快感が残る。

 12月9日に選考が行われた「プロレス大賞」でも2人は陰の主役だった。石井と争った末、敢闘賞を受賞した関本はMVPの候補にも挙がり、石井はベストバウト(対田中将斗、2・3後楽園)、殊勲賞と3部門にノミネートされた。敢闘賞の“決戦投票”では、私だけでなく報道各社の選考委員も迷っていた。無冠に終わった石井には「努力賞があれば…」という声が上がるほどだった。

 来年以降も、2人は華麗なファイトスタイルのアンチテーゼとして、プロレスから遠ざかっているオールドファンを呼び戻して欲しい。ちなみに、コスチュームは石井が黒を基調としたハーフスパッツで、関本は黒のショートタイツ。受け継ぐ?“力道山カラー”も魅力を倍増させている気がする。

(デイリースポーツ・大島一郎)

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