意外なアナウンス…CS導入効果を実感

 10月8日夕刻、通勤客でにぎわい始めた西武池袋駅で、意外なアナウンスを耳にした。

 「本日、西武球場で行われるロッテ戦の入場券は完売しました」

 はて、確か今日は最終戦。消化試合のはずでは?

 最近はプロ野球から遠ざかっていたからうっかりしていたが、実は西武とロッテが2位をかけて争う真剣勝負だったのだ。

 プロ野球がクライマックスシリーズを導入してから、制度はいろいろ変わり、今では2位と3位はCSファーストステージ開催球場を争う位置付けとなっている。引き分け試合が発生し勝敗が同数となった場合は2位チームにファイナルステージ出場権が与えられるが、あまり大きなアドバンテージとは思えない。

 ただそれだけのこと、と考えていたが、ファンはこの2、3位を決める最終戦に大きな意味を見いだしていた。その証拠が32258人という観客数だ。これは調べてみると西武主催試合で今季8番目の数字になる。

 観客数と言えば現役記者時代、私は巨人を中心に担当していたため、満員が当たり前だった。だから、ファンが野球のどんな一面に興味を持つのか、鈍感なままできたのかもしれない。

 しかしただ一度、スタンドを見て驚いたことがある。1979年4月の後楽園球場だった。

 その試合は、巨人・江川卓のプロ初登板となったイースタン・リーグ、対ロッテ戦。社会問題にまで発展した「空白の一日」という裏技で巨人に入団した江川が投げるので、押しかけるであろう観客を多摩川グラウンドでは御しきれない。そこで急きょ後楽園が使われることになったが、もちろん前売りはなく、指定席もない。

 開門と同時に、数万人がいい席を取ろうとスタンドをダッシュした。怒号が飛び交った。一塁側巨人ベンチから眺めたその光景、スタンドの震動を私は忘れられない。

 1人の投手の登板を見るために走り、ひいきチームが2位か3位かを見届けるために球場を満員にするー昔も今も、つくづく野球とは国民的スポーツだと改めて思った。

(デイリースポーツ・岡本清)

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