宇佐美の収穫、柔道野村の言葉から期待

 8月26日、アジア・チャンピオンズリーグ準々決勝・全北(韓国)戦。昨季のJリーグ王者であるG大阪と、Kリーグ王者である全北とがぶつかった。結果は0-0のスコアレスドロー。ただ、その結果以上にG大阪は劣勢だった。前半のシュートはMF明神がGKの正面に放った一発のみ。後半こそ、4-2-3-1に布陣を変え、徐々に攻撃の回数は増えたが、全体を通して全北の“強さ”が光っていた。

 日本代表のハリルホジッチ監督は、頻繁に「デュエル」という言葉を口にする。決闘、1対1の攻防というような意味だが、指揮官は特に、球際で体を張る強さを求めている。

 韓国は「デュエル」に強かった。やや危険なプレーもあったが、それを差し引いても、ボールを持った瞬間の勢いはさすがだった。FW宇佐美貴史(23)のシュートは、会場で配られた記録だと後半26分の1本のみ。相手の徹底したマンツーマンディフェンスに、ほとんどボールを持てなかった。選手たちも「今までになく強かった」、「韓国のチームは、Jのチームとフィジカルが違う」、「Jリーグは簡単に倒れるようなプレーが多い」などと口にしており、選手もその差を実感しているようだ。

 宇佐美も少ないチャンスでパスやドリブルで攻撃の起点になっているだけに、「不調」とは言えないまでも、ここまで代表の東アジア杯を含めて8戦不発と結果は出ていない。エースとしての期待に応えきれなかった東アジア杯のあと、収穫は?と問われた宇佐美は「結果を得られなかった悔しさ」と語った。

 やや話は飛ぶが、先日、柔道の野村忠宏氏(40)の引退試合と会見を取材した。五輪3連覇を果たした男が引退を機に残した言葉は、競技を問わず「強さ」に通ずる気がした。

 今後、どんな選手を育てたいかという問いだった。「負けた時の悔しさを生かせる選手。ここって、本当に勝たないといけない時に、負けた悔しさや、見つけた課題を生かして、本当に勝てる選手。悔しさで強くなれる選手」。野村はそう答えた。「根性論は、はやらないけど、実力者がそろう中でギリギリの勝負を分けるのは、気合と根性だと思う。ギリギリの勝負を制することのできる精神的な強さ、心の強さ、最後の執念を持った選手を育てたい」

 野村氏はこうも言った。「真剣にやってりゃ、試合であろうが、練習であろうが、負けたらすーごい悔しい。悔しさをエネルギーにしていた。負ければ負けるほど、熱くなっていた。そうしていたら、気付けば強くなっていた」

 根性論は確かに、今の時代に合っていないかもしれない。それでも、オリンピックという大舞台を3度制した男が強くなった原動力は「悔しさ」。和製エースが得て帰って来たものと同じだ。彼の持ち帰ったエネルギーは、いかほどか。結果が出ていない今、いかにその力を発奮させるかは、選手としての今後の可能性を大きく左右するはず。なにせそのパワーは、五輪を3度制する力に化けることもあるのだから。宇佐美の「悔しさ」の大きさと深さを、ゴールで見せてほしい。(デイリースポーツ・國島紗希)

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