【野球】センバツ選考の『地域性』とは

 第88回選抜高校野球(3月20日開幕、甲子園)の出場32校が1月29日に決まった。当日の私は出場候補の学校ではなく、初めて大阪市内の選考会場での取材を経験した。公開の選考委員会総会では、数々の疑問を抱きながら、地区別選考経過報告に聞き入った。

 委員会終了後の記者会見にも出席した。選考過程や結果に関する質疑応答の場である。読者や視聴者に説明するためには、伝える側が事情を理解せねばならない。多くの人が抱くであろう疑問を事前に解決すべく、記者がそれぞれの質問をぶつけた。

 多かったのはセンバツ特有の『地域性』と『チーム力』の関連性を確認する質問である。今回では近畿と中国・四国の6枠目の選考に関してだ。両地区には21世紀枠と明治神宮枠も絡んでいた。

 近畿の最終枠は8強の報徳学園(兵庫)と市和歌山が争った。報徳は準優勝の滋賀学園に延長14回の末、0-1で惜敗。市和歌山は4強の明石商(兵庫)にコールド敗退。両校の負け方を単純比較すれば、大多数が報徳有利と考えるだろう。

 しかし、選出されたのは市和歌山だった。県大会での打率、防御率も比較した結果、選考委員会は「両校は同等の力」と評価。兵庫からは先に21世紀枠で長田が選ばれていたが「それを斟酌(しんしゃく)してということではない。21世紀枠との関連はありません」と繰り返し強調した。

 一般選考で明石商が選ばれた影響に関する質問には直接答えることなく、「最終的に地域性ということになったが、21世紀枠との関係ではない。和歌山が選ばれていなかった」という点での『地域性』は認めていた。

 もう一つが中国・四国だ。もともと両地区で計5枠が、今回は高松商(香川)が明治神宮大会を制したことで1枠増。しかし、結果だけを見れば神宮枠の恩恵にあずかったのは四国ではなく、中国と見られても仕方がない選考となった。

 委員の説明では、神宮枠を考慮して最初に四国3校、中国2校を選出。6校目を四国4番手の済美(愛媛)と中国3番手の開星(島根)で争い、投手力、攻撃力とも上と評価された開星に決まったと明かした。

 報道陣からは、例年通り四国2校と中国2校を選び、両地区の3番手を比較した上でまず5校目を選出。その後、四国の次点の学校を6校目の代表とする選考方法は検討しなかったのかという指摘があった。

 ここでも『地域性』が浮上する。21世紀枠で小豆島(香川)が先に決まっていたことが影響したのではないかという疑念だ。大会事務局は「結果的に四国3、中国3になったが、理論上は四国4、中国2もあり得た。今の方式がベスト」と付け加えたが、記者間では、どうも腑(ふ)に落ちないという空気が充満していた。

 中国・四国で5枠という従来の設定は以前から議論の対象になっていた。直接対決のない両地区の3番手を比較することは簡単ではない。今回の事例は、神宮枠と21世紀枠まで絡んだことでさらに複雑になった。

 また、土佐(高知)と済美はともに準決勝で1点差負けだったが、四国3校目には土佐が選ばれた。準優勝の明徳義塾(高知)と同県だったが『地域性』は加味されなかった。中国・四国に関しては、両地区で県大会同様に3位決定戦を実施すれば、より多くの人が納得できる選出につながると思われる。

 選考委員会の中での『地域性』と『結果重視』には一貫性がないと指摘されても仕方がない。ある学校の指導者は「地域性や結果重視というのはすべてが後付け。理由は後から何とでも言える」と不透明な選考過程に対し、疑問を投げ掛ける。

 北海道(1枠)、東北(2枠)、東海(2枠)、北信越(2枠)、九州(4枠)は秋季地区大会の上位校が順当に選ばれた。東北は青森2校、北信越は福井2校となったが疑問視する声は出なかった。すなわち『地域性』より『結果』を優先した場合、異論は少ない。

 大会事務局は「データはあくまでも参考資料であって、実際に選考委員に現場に行ってもらい、目で見て判断される。現場で見た場合には数字と違う印象を持たれる。選考委員の目を一番信用している」と補足説明した。

 選抜大会という性質上、夏の選手権と異なるのは当然である。ただ、結果以外にいろいろな要素を加味するのが特色の一つとはいえ、選考過程や条件をもっと透明化し、地区間で最大公約数の共通性を持たせることは必要だと感じる。

 『地域性』と『結果重視』を都合よく使い分けるのは問題である。秋季地区大会終了から出場校発表までの約3カ月間、球児たちに余計な期待を持たせて、振り回してしまっているという現状は改善する必要がある。(デイリースポーツ・斉藤章平)

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