末続慎吾、熊本地震で車中泊していた

 陸上男子200メートルの日本記録保持者・末続慎吾(35)=熊本陸協=が5日、先月の熊本地震を熊本市内で体験していたことを明かした。この日は水戸招待(ケーズデンキスタジアム水戸)に出場。男子100メートル予選で10秒71をマークしたが、決勝は棄権した。

 陸上界のレジェンドが地元での被災体験を明かした。15年3月にミズノを退社して以降、東京と熊本を拠点に競技を続けているベテランは、先月14日の地震発生時、熊本市内で外出していた。「地面が爆発したような揺れを感じて、怖くて本能的に走って安全なところまで逃げた」。

 さらに、熊本市を震度6強の揺れが襲った16日未明は自宅で就寝していた。「訳が分からないくらい揺れた。とにかく外に出たけど、揺れが収まらなかったので車中泊した」。家族の無事は確認したが、部屋の中は散乱した状態。そんな中でも、頭をよぎったのは出場予定のレースのことだった。

 熊本から福岡まで車を飛ばし、18日には東京で練習再開。ただ、葛藤も生まれた。「こんな時に走ってていいのかなと。でも迷うのが人間。何のために続けてきたのかと。簡単に割り切れるものじゃない」。食事や睡眠もままならない中で、何とかレースまでこぎ着けた。「競技者として何ができるかとかじゃなくて、『俺、大変だったんだよな』と。何とか走って、(周囲に)何かを感じてもらえるかな、と思わないと前に進めなかった」。

 4日前からは右太ももにしびれを感じた。「(地震以降)ちょっと無理をしたんだと思う。年を取るとわけのわからない違和感がどんどん出てくる。でもそれを今の走りに生かすことが現役ってことなんだと思う」。被災地に対しては「体も精神も大変な状況だと思う。頑張ろうとは、まだ言えない」と当事者として苦しい心境を明かした。

 走る意味も変わる。「日本選手権やリオ五輪という目標は置いといて、走りというものをとにかく前に進める。それが結果的にどういうストーリーになるかはわからないけど」。さまざまな思いをかみしめながら、末続慎吾は走り続けていく。

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