西岡良仁 錦織2世の声「期待と思う」

今後の抱負を語る西岡良仁=東京・西が丘の味の素トレセン(撮影・堀内翔)
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 男子テニスで錦織圭(25)=日清食品=が活躍する中、それに続く選手も次々と現れている。西岡良仁(19)=ヨネックス=はその一人。錦織と同じ米国・フロリダのIMGアカデミー出身であることから“錦織2世”と呼ばれることもあるが、利き腕は錦織と反対の左。身長は170センチと10センチ低くプレースタイルもやや守備的と、違う点は多い。注目株の西岡らしさとは何か、本人に聞いた。

 正直なところ、錦織2世と呼ばれることは嫌じゃないですか?こんな問いに西岡は「まあ、でも…」と少し考えてから続けた。

 「2世とか言われるのは、これからの結果の期待みたいな感じだと思うので。(名前を)出してもらえるだけでうれしいですね。(本音は)自分の名前を出してもらいたいですけど。比較される段階にいるので仕方ないかなと」

 19歳らしからぬ落ち着いた口調で「圭くんがいるので、比較されることは当たり前のことだと思うので」とも語った。世界ランクは143位(取材をした15年7月15日時点)。自分の立ち位置を冷静に把握していた。

 4歳でテニスを始め、中学3年の夏に盛田正明テニスファンドの支援を受けIMGアカデミーに留学した。17歳で迎えた2012年全米オープン・ジュニアの部では単複ベスト4。翌13年2月にはメキシコのフューチャーズ大会(ATPツアーの下部カテゴリー)で初優勝した。

 14年1月にプロ転向してからも着実にステップアップしている。同年のアジア大会では日本人選手として40年ぶりとなる金メダルを獲得。同年の全米オープンと、今年の全仏オープンでは本戦に出場(1回戦敗退)を果たした。

 ただ、階段を登るにつれ世界トップとの差もより明確になってきた。全仏オープン1回戦では当時世界ランク4位のトーマス・ベルディヒ(チェコ)と対戦し、ストレート負けを喫した。緊張から、第1セットは1ゲームも奪えず。落ち着きを取り戻した第2セット以降も「主導権を握られてしまうのが今の実力だな」と痛感した。

 「自分が攻めている状況が少ない。ベルディヒの球が重いですし、フラット系(ボールにあまり回転を加えない威力のある球)で速いですし…。いつも打ち合っているボールと全然違う質だったので。これからはそういう選手と戦っていくために体づくりも必要だと思います」

 素早いフットワークでボールに食らいつき、一瞬のチャンスを逃さずポイントを決めるのが西岡の持ち味だが、それだけでは戦えないことを痛感すると、7月に入り、都内のナショナルトレーニングセンターで集中的な筋力トレーニングを敢行した。ベンチプレスは「60キロぐらい」しか上げられず、アスリートとしては筋力は弱い方。下半身は数種類のスクワットもこなして、「今より半歩前に出る」出足を得る下地をづくりに励んだ。

 ラリーで粘ってポイントを重ねるといっても、ツアーの中で最も小柄な部類に入る西岡には1ポイントを取ることも大変な作業だ。ビッグサーバーと呼ばれる長身を生かした強烈なサービスを放つ選手にかかれば、絶対に返せないようなサービスを決められることも多い。

 自分にはない武器を持つ選手を「うらやましくなることは多いです」と本音も漏らすが、「でもそれができない分、僕は動けるので、技術の面でもボールを入れる能力が高かったりと勝っている部分もある」と発想を転換させて向き合っている。例えばリターンゲームでは細かく位置取りを変えて相手をかく乱したり、考えさせたりといった、小兵なりの工夫をしているのだという。

 コートを離れれば、ファンだという乃木坂46の西野七瀬の写真集に喜んだり、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に出てきたイタリアの町を訪問し興奮したりもする普通の若者。そして、ラケットを握る時はトッププレーヤーたちと同じ目線で世界を見据えている。今年の目標は「世界ランク100位以内に入ること」。7月15日時点で100位の選手とのポイント差は160点あり、ATPの下部ツアーに当たるチャレンジャーツアーで確実に上位に入らなければ縮めることは難しい。

 8月31日開幕の全米オープンが次の大きな節目になる。その前に4つの大会に出場する予定で、「そこである程度ポイントを稼いで100位を切れるならそれにこしたことはないです。いい状態で全米に臨みたいと思っています」。西岡は自分らしく、世界トップを目指して歩んでいく。

 ◆西岡良仁(にしおか・よしひと) 1995年9月27日、三重県津市出身。左利き、両手バックハンド。170センチ、64キロ。4歳からテニスを始め、父親の範夫さんの指導で小学生時代から各種全国大会で優勝していた。好きな選手は90年代に活躍した元世界1位のマルセロ・リオス(チリ)。理由は「同じ左利きで、センスがある。ああいうプレーをしたい」から。家族は両親と兄。

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