町田樹が“最高傑作”でラストダンス

 「フィギュアスケート全日本選手権エキシビション」(29日、長野ビッグハット)

 メダリスト・オン・アイスが行われ、前日に電撃引退を発表した町田樹(24)=関大=は、ソチ五輪シーズンのSP「エデンの東~セレブレーションバージョン~」を滑り、現役生活に終止符を打った。

 “氷上の哲学者”が選手生活のフィナーレに選んだ曲は、自ら「町田樹史上最高傑作」を称した「エデンの東」だった。柔らかな旋律とともに、町田の“最後の舞が、観衆を引き込んでいった。万感の演技を終え、マイクを握ると「堂々と誇らかに引退することができます。本当に…いい競技人生でした」と、涙。アンコールをしっとりと舞い、ラストダンスを終えた。

 終演後には同じく今季引退した村主章枝とともに再びリンクへ。次代を担う宇野昌磨(中京大中京高)から花束を受け取る際には、氷に残した思いを託すかのように、がっちりと握手を交わした。

 昨季、「五輪争い6番目の男」からソチ五輪5位、世界選手権銀メダルという誰もが驚いた快進撃は、1つの言葉から始まった。

 『ティムシェル』

 「汝(なんじ)、治むること能(あた)う」と訳されるこのヘブライ語は、「エデンの東」の原作(ジョン・スタインベック著)に登場。この言葉のとらえ方は、読み手によって様々だが、町田はこれを「自分の運命は自分で切り開く」と解釈。まさしく町田はこのプログラムとともに自らの運命を切り開いていった。

 前日に世界選手権代表発表の場でマイクを握ると突如引退を発表し、代表辞退を表明。早大大学院進学と研究者を目指すことを宣言した。電撃的かつ用意周到な引退発表も、大胆かつ思慮深いどこまでもエンターテイナーな町田らしい新たな一歩の踏み出し方といえた。これもまた町田の『ティムシェル』。唯一無二にして、規格外な異端のスケーターはリンクを降り、自ら切り開いた新たな運命の中に飛び込んでいく。

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