胴上げで帽子を持ち替えていた星野監督

 交流戦で楽天に3連勝した阪神が、球団通算5000勝を達成した。今年は創設80周年の節目でもあり、積み重ねてきた歴史の重みを感じさせる。

 プレーする選手はもちろん、ファンの人もそれぞれ印象に残る試合があるだろう。カメラマンとなって24年目の私にもそんな試合がある。

 2003年9月15日、といえばご存じのとおり、星野阪神がリーグ優勝を決めた日だ。当然、報道各社はベストアングルを求め、考えられるすべてのポジションにカメラマンを配置した。当時私は「トラ番」カメラマンではなかったが、号外要員として取材できることになった。

 それまでにも何度か胴上げ取材を経験していたが、肝心な時に私のファインダーに映るのは決まって監督の背番号だった。

 日が暮れた球場で星野監督は宙に舞った。1回…「あぁ、やっぱり背中か」。2回「おっ、こちらを向いてくれた!」。3回…「笑顔もよく見えていい雰囲気。やった!」。4回「また向こう向き」。初めてキレイな胴上げが撮れた、しかも18年ぶりの阪神優勝で。感激しながら写真を送信した。

 あれから12年。紙面で当時の写真が必要になり、違う位置から撮影されたものを見たとき、一瞬違和感があった。「何か違う」。更に他のアングルの写真を見比べてわかった。初めは帽子を右手で持っていたのが、後で左手に持ち替えていたのだ。

 少しでも多くのファンに歓喜のナイン、自身の笑顔を見てもらいたかったのか。優勝インタビューの言葉を思い出した。「この甲子園で、みんなの前で胴上げされたかった」。

 ファンと一体になり、時には厳しくチームを鼓舞した星野監督。

「闘将・星野」の笑顔はファンにとっても、私にとっても最高のプレゼントだった。

(写真と文=デイリースポーツ・坂部計介)

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