涼風真世、「狂気を感じた」役を熱演

芸歴35年の女優・涼風真世が「人生最高の役」というミュージカル『貴婦人の訪問』のクレア。昨年、圧倒的な歌唱と存在感で、絶賛された舞台が早くも12月に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で再演されることに。涼風真世が大阪で本作への想いを語った。

原作は、映画化もされたフリードリヒ・デュレンマットの戯曲『老貴婦人の訪問』。2014年にはウィーンでミュージカル化され、スリリングな愛憎劇に幅広い音楽を絡めた舞台が大ヒットとなった。愛する人に無残な形で裏切られ街を追い出されたクレアは、大富豪となって帰郷。彼女は財政破綻寸前の街への寄付金と引き換えに、元恋人アルフレッド(山口祐一郎)の死を望む。「ウィーンの舞台映像を最初観た時、クレアに狂気を感じました。これを私が演じるのね・・・と(笑)。でも、こんな大人のミュージカルを作っていけるのは幸せ。これだけ信念を持って復讐を果たしていく強い女性を演じるのは初めてで、やりがいがありました」。

宝塚歌劇団月組トップスター時代から現在まで、歌唱力にますます磨きがかかっているが、これほど大変な楽曲に挑戦したことはないと話す。「クレアの楽曲『正義』『世界は私のもの』は毎回命を懸けて歌っていました。1曲歌い上げるのにとても体力が必要。昨年は喉の筋肉を鍛えることから始めました」。その成果もあって劇場を包み込むような歌声に、観客は文字通り飲み込まれた。

再演では楽曲をクリアするところからさらに踏み出し、役をリセットして臨みたいという。「だれもが生まれた時は純真無垢な赤ん坊。なぜ彼女がここまで復讐に燃えるのか、その過程をもう一度考え直したい。今年はもっとクレアの人生を歩いてみたいと感じています」としみじみ話す。ミュージカルとしては異色の集団心理、拝金主義などを盛り込んだシニカルな作品。涼風は「例えば宝くじが当たったとして、その人の人生は幸せなのか。街の市民の変化に自分を重ねるなど、色んなことを感じていただけると思います」と語る。

本作はクリスマスに大阪で大千秋楽を迎えるので、「共演者やスタッフとプレゼント交換をしたい!」と明るく語っていた涼風。ぜひ舞台での変貌ぶりを堪能してほしい。チケット料金12500円。

取材・文/小野寺亜紀

(Lmaga.jp)

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