野村周平&賀来賢人、ひと夏の思い出

高校の同級生だったノーテンキな大学生・清高(野村周平)と、ネクラのヤクザ・轟木(賀来賢人)は、ある日とんでもない再会を果たし、それを機に同じ自動車教習所に通うこととなる。それぞれ歩む道の異なる2人が交錯し、そしてまた進んでいく、ひと夏のできごとを描いた映画『森山中教習所』。原作は、松本大洋の再来と評された漫画家・真造圭伍のデビュー作(当時23歳)。W主演の2人、野村周平と賀来賢人を直撃インタビューしました。

写真/Ayami

「(野村周平が)中学生にしか見えなかった」(賀来賢人)

──野村さんは今年、『ライチ☆光クラブ』『ちはやふる』に続いて、またまたコミック原作の映画ですね。

野村「漫画原作の映画、多いですよね。『日々ロック』(2014年・入江悠監督)『男子高校生の日常』(2013年・松居大悟監督)もそうでしたし。でも、『ちはやふる』とは全然違う青春ですよね。あれはスポーツにかけた青春って感じですけど、こっちはゆったりと流れる青春というか。男友だちとはこういうものだ、という青春ですね」

──おふたりは同じ事務所の先輩、後輩という間柄ですが、お互いの印象はどんな感じですか?

野村「面白いし、才能に溢れる人だなって。事務所のイベントでは会ってました。ダンスも芝居も素晴らしくポテンシャルが高いんですよ」

賀来「いやいや、ダンスとかできないよ!」

野村「絶対ダンスできますよ。ポテンシャルがすごい高いんですよ。顔のレベルも高いし、身長も高いし、芝居のレベルも高いし、歌もうまいですし。あと、かつらも似合うし、アクションもうまいし、僕のヒーローです」

──褒め殺しにも聞こえますが(笑)。

賀来「すべてが嘘に聞こえる、ひとつも信用してません(笑)」

──でも、現場ではやりやすかったんじゃないですか?

賀来「最初の撮影が高校時代のシーンだったんですけど、(野村が)中学生にしか見えなかったんですよ。その佇まいにすごく興味を持ったんです、なんだこいつは?って(笑)」

野村「僕も自分で、中学生くらいだなと思いましたね(笑)」

──野村さん演じるノーテンキな大学生・清高と、賀来さん演じるネクラのヤクザ・轟木は高校の同級生で、偶然再会したところから物語は進んでいくわけですが、2人の距離感が良かったですよね。

野村「ストーリーが漫画っぽくないんですよね、日常的というか。本来は、現実味が帯びてない方が演技をする上ではやりやすいんですけど、この清高っていう人物は僕と合ってるみたいで(笑)。演じやすかったし、全部楽しくやれましたね」

賀来「俺はセリフがあんまりなかったので、表情で見せないといけなくて。そのあたりはチャレンジというか、いろいろ考えながら演じてはいましたけど、周りのキャストの方にいろいろ助けたいただいた感じですね。現場の空気感がもうできあがってたんですよ。そのなかで芝居するだけだったので、苦労とかはなかったですね」

──それぞれが抱える将来への悩みなどを暗示させつつ、同級生ならではの許し方というか。男と女ではなかなか描けない関係性で。中盤にかけて、その関係性が映画の主体となっていきます。自由がゆえの悩みと、自由がない悩み。ひと夏のできごとを通過しながら、それぞれが覚悟を決めるという。

野村「清高が覚悟を決めたのは、オヤジを投げ飛ばしたところですかね、そこでちょっと心を決めて、自由なのを活かして好きなことをやってみようと」

──清高は、マイペースっちゃマイペースなんですけど、そうせざるを得ない環境に置かれてたっていう。

野村「無理してたんでしょうね。ちょっと無理してたけど、清高自身がそこは見せたくないというのがあったんだと思います」

賀来「僕が映画を見て思ったのは、最終的には自由とか自由じゃないとかはどうでもいいのかなって。たとえば、轟木がヤクザだろうがそうじゃなかろうが、あの終わり方になる。その過程が大事なんじゃないかって。なんか違うことに共鳴したというか、清高と」

──最後のシーンで、2人はすれ違うじゃないですか。あの時点では確実に自分の置かれてる状況を受け入れてますよね?

賀来「でも、あれをちょっと怖いともとれるじゃないですか。現実はなにも変わってない。ちょっと曖昧な終わり方にしてるのが、僕は結構面白いなって。全部言わないというか」

──その場面で豊島圭介監督から、おふたりへの演出はなにかありましたか?

野村「特になにもないです。監督は友だちのように接してくれてお互いに意見を言いやすい関係になっていたので、いろいろ提案させてもらいました。『なんかやってよ!』と言われて『え~』みたいなこともやってました (笑)」

──ただの友だちじゃないですか。

賀来「普通に初めて現場に来たら、なんだこれって思いますよ。監督の威厳なし!みたいな(笑)」

「ひと夏の思い出は、神戸の『祇園まつり』」(野村周平)

──賀来さんと監督もそんな関係・・・。

野村「いや。賀来くんのときは、監督は真剣モードでしたよ(笑)。監督、眼鏡をなおすクセがあるんですけど、それが出るときは真剣モードなんです」

賀来「僕はもう、任せてもらえてる感じはありました。『ソフトボーイ』(2010年)で1回やってるんで、僕の提案にも『じゃあそうしようか』とか、『それプラス、これはこうしよう』とか。同じレベルでのディスカッションができたのでうれしかったですね」

──それに該当するシーンはどこですか?

賀来「そうですね。僕がチンピラをボコボコにするシーンとか。眼鏡を外す、外さないとかそういう細かいところですけど、どういう動きをして人を殴るとかですね」

──あの狂気的な殴りっぷり良かったですね、初めて轟木の内面が露わになったという。

野村「狂気的なお芝居は上手ですからね・・・賀来さんは(笑)」

賀来「そうそう。ストレスをアクションにぶつけてね」

野村「その原因は、たぶん僕でしょうね」

賀来「なんでだよ、なんでそんなネガティブなんだよ(笑)」

──野村さんの殴られっぷりも良かったですよ(笑)。

野村「すごく難しかったんです。結構やり直ししてもできなくて。友だちだったはずの監督も少しピリつくみたいな(笑)。時間の制限があったんで 早く終わらせないといけなかったんですよ。でも、大事なシーンだったから、妥協はしたくなかったんで」

──今お話うかがっていても相当仲よさそうなおふたりですが、この映画は清高と轟木の関係性がキモですよね。おふたりの間では、どんな話し合いがされたんでしょうか?

賀来「いや。全然」

──まったく?

野村「どんな曲聴く? とか、どんな女の子が好き? とか。たわいもない話をしながら、時間が過ぎていきましたね」

賀来「なんか、全員が同じ空気感になってたんですよね。ぼ~っとするというか。その現場の感じが良かったんですよね。監督やプロデューサーがうまく作ってくれたと思います」

──廃校を利用した自動車教習所をはじめ、美術の西尾共未さん(註:2004年の岩井俊二監督『花とアリス』で装飾担当デビュー。2006年にはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『バベル』にも参加。本作で初めて美術を担当した)の仕事も大きかったのではないですか?

野村「漫画に近づけてくれて、ありがとうございますと思いました。教習所が素晴らしいですからね、その前にある校庭も。あそこで撮影できたからこそ、こういう雰囲気になったというのもありますね。素晴らしかったです」

──あと、印象に残ったのが、清高を追いかけるヒロイン・松田千恵子を演じた岸井ゆきのさん。もうひとり、麻生久美子さん演じるヒロイン・上原サキがいますけど、この映画は岸井さんで始まり、岸井さんで終わるというぐらい、重要な存在です。

賀来「あ、この映画のインタビューで初めて岸井ゆきのちゃんの名前を聞いた気がする・・・」

野村「僕も初めて聞かれました」

賀来「あなた、一番絡んでるじゃん!」

野村「そうなんですよ!」

──彼女は間違いなく、今年もっとも注目すべき女優さんだと思います。

賀来「ちゃんと言っておかないと」

野村「ホントですよ。僕に似てるというか、僕の悪ふざけにもついてきてくれて。(魚の)『なめろう』ってあるじゃないですか。どうやって『なめろう』を面白く言うかというゲームをやってました」

──誰とですか?

野村「岸井ゆきのちゃんと監督とです」

賀来「監督も入ってくるんだ(笑)」

野村「監督は、絶対に入ってきてくれるんですよ(笑)」

──岸井さんとの共演はどうでしたか?

賀来「僕は1秒も見てないですね。いや、見た、見た。最後のすれ違いのシーンのときに初めて共演しましたね。10メートルくらい先の方で」

野村「ほとんど僕との絡みだけですもんね。でも、撮影時間は短かったんですけど、すごく面白かったですよ。素晴らしい女優さんでした」

賀来「ホント。聞いてくださったの初めてですよ」

──最後に、おふたりのひと夏の思い出を聞かせてください。

野村「やっぱりお祭りですよね。ワクワクしたなぁ。地元(神戸)で『祇園まつり』というのがあって。中学生の時にどれだけ私服をカッコよくできるかという戦いがありました」

賀来「浴衣じゃないんだ?」

野村「B系です。どれだけモテるかと(笑)」

賀来「僕は男子校だったんで、学校の近くの祭りに周りの女子校の子たちが集まってくるんですよ、一斉に。男子校が1校しかなくて、女子校が4校くらいあったので、そのときですよね。本気を出すのは。甚平みたいなのを着て、いろんな角度で顔を作ってました(笑)」

野村「やっぱ夏っていいですよね!」

(Lmaga.jp)

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