山下智茂氏、早鞆・大越基監督対談【4】解析したら丸裸にできる…けど、自分は嫌

 早鞆の大越基監督(45)が、プロ引退後に高校野球の指導者を目指した理由をデイリースポーツ評論家の山下智茂氏(71)=星稜総監督=に熱く語った。あえて技術論より人間形成に重きを置く姿勢は、元プロとしての理念でもある。また、プロアマの垣根が低くなったことで浮かび上がる課題にも言及した。

  ◇  ◇

 山下智茂氏(以下、山下)「僕はもう少し投げ込みを奨励してもいいんじゃないかと思うんだけど、どうかな。昔みたいに極端に300球とか500球とか投げろというんじゃなく、ある程度でいい。1週間に150球は1、2回投げなきゃいけなんじゃないかと思うけど。肩のスタミナ、心のスタミナもある」

 大越基監督(以下、大越)「自分の場合、練習試合は土日各2試合で計4試合。投手は土日で多くても9イニングと決めている。無理はさせていないけど、それでも痛いという報告が来る。自分の高校時代は(投球練習の)終わりが近づくと竹田監督が今のボールだよ、今のボールだよって終わりがなかった。でもあれがよかったです。そうじゃなかったから甲子園で4連投はできなかった」

 山下「あれだけのコントロールもね」

 -今は体育の授業でも制限が多い。

 大越「1500メートル走もなくなりました」

 -熱意のある指導であればあるほどリスクが増える。

 山下「高校野球だけじゃなくスポーツ界全体がそうなる。だから指導者は勉強しないといけないね」

 大越「逆にチャンスだと考えたい。リスクを恐れて周りができなくなるなら、そこを追求していく」

 山下「いいこというね。勉強になった」

 -それだけ経験を積み勉強してきた。

 大越「いろんなことで大失敗を結構してきたんで。上から(生徒に)ガーンと言うことは少なくなった。話して理解させて動かす方法でないと。高校野球の監督と保護者のトラブルは毎年あること。自分自身が悪いことをしていないと思っても、勝つためにやってきたことが今の時代には受け入れられないこともある。本当に勉強していかないと」

 山下「説得から納得。納得しないと子供も親も動かない。納得するようなことを指導者が勉強していかないといけない。野球以外の勉強をしないと。世の中の情報を入れながらいろんな人から教えてもらう。教員以外の勉強もしないと」

 -指導者としてのモットーや理念は?

 大越「自分で自分のことはわからないですね。でも最近、自分はそこまで野球を好きではないんじゃないかって思うんです(笑)」

 山下「えっ?」

 大越「どちらかと言うと人間が好きなんじゃないかって。甲子園を目指して頑張っている子たちをバックアップするとか、いろんな指導者の方を見たり接したり。人が好きで人のために動くのが好きで、意外とそっちの方(のエネルギー)で動いているのかなって」

 山下「まあ、そこがスタートかな。人が好きでないと何もやれない。子供が好きじゃないと。子供が好きでやっているうちに、子供が成長して野球がうまくなって、野球が好きになってくる。甲子園が好きになってくる」

 大越「甲子園に連れて行きたいんですけど、自信がないのか…。自分ではわからないんですけど、野球じゃなくて人(人間教育)なんですよね。まずは人からかなって思って」

 山下「甲子園に一度出た時は?」

 大越「(就任から)2年半で行ったんです。何もわからないまま無我夢中で。オレについて来いって感じでガツガツ行った感じで」

 -自身にとって甲子園とは?

 大越「あそこで自分をアピールできたからプロ野球に入って、指導者もできている。とてもすばらしい場所。人を成長させてくれる場所ですね。あそこだからこそ4連投できましたし、あそこだからこそ自分が持っている力を出せた。そういう部員を自分の指導で増やしていかないと。そこに早く到達したいですね」

 -1試合の重みが違うんだろう。

 山下「雰囲気が独特だからね。ああいう球場ないもん。上からじゃなく横からばーっと観客が見てくれる。高校野球の監督は我慢我慢の人生だけど、あそこへ行ったら男のロマンを感じるよね。あそこへ行った時のこどもたちの喜び、笑顔がいい」

 大越「言われてみたらそうですね。特に雪国は、つらい冬の雪のグラウンドから夏の甲子園へ。子供たちにとっては全然違うところに行くという感じ」

 山下「佐伯会長の頃は(春の)キャンプがダメでそのままセンバツに入るから、甲子園練習が始めての土。あのスパイクの音が感動的でうれしくて、あの喜びは何とも言えなかったなあ」

 -元プロの監督としての高い技術があるが、それをどう生かす。

 大越「プロ野球を経験して、ビデオで相手を解析したら丸裸にできるという自信はあるんです。けど、自分は嫌なので一切しない。ミーティングで相手投手の癖とか盗塁とかけん制とか伝えても、彼らは聞いているだけ。自分で感じて盗めって言っている。相手がプロ注目の投手とかならアドバイスするけど、普通の投手ならお前たちが練習して努力したら勝てると」(5に続く)

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