元虎スカウトが注目した甲子園球児7人

 夏の甲子園は大阪桐蔭が2年ぶり4度目の優勝を飾り、25日に閉幕した。プロが熱視線を送る逸材たちも、聖地での最後のアピールを終了。昨年まで阪神で25年間スカウトを務めた菊地敏幸氏が、今秋ドラフトの動向と高校生候補の注目株について総括した。

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 大逆転や劇的な試合が相次いだ今大会ですが、目を引いたドラフト候補がどれだけいたかという点では、例年に比べて少ない印象がありました。その中でも、7人の選手をピックアップしてお話ししましょう。

 投手は済美・安楽、前橋育英・高橋光、佐野日大・田嶋らが地方大会で敗退。パワーピッチャーが少なかった中で「右の松本、左の森田」が双璧でした。

 前評判が高かった盛岡大付(岩手)の150キロ右腕・松本裕樹投手。体調が万全ではない中で、東海大相模を相手に投球術を駆使して3失点完投。ピッチングセンスのよさが見えました。体の力もありますし、体調さえよければ、プロで十分にやれる素材です。右肘の状態のチェックは必要ですが、入団してからでも、じっくり治しながら体力をつけていけばいい。痛がるそぶりを表に出さず、マウンドで堂々としていたのもプロ向きといえます。

 富山商の146キロ左腕・森田駿哉投手は、プロの2軍投手コーチが喜ぶタイプ。バランスのいい投げ方で、腕も振れている。身長も183センチと大柄で、育てがいを感じる投手ですね。大学進学を希望していると聞きましたが、即プロ入りを選んでも十分な評価を受けるレベルにあります。

 投手でもう1人、目についたのが、海星(長崎)の右腕・吉田嵩投手です。まだまだ荒削りで力いっぱい投げているだけの印象はありますが、フォームのバランスはいい。投げっぷりのよさに魅力を感じます。球速は145キロが出ていましたし、181センチ、85キロと体の強さもありそうで、じっくり育てれば楽しみ。プロ志望なら“隠し球”的な存在になるかもしれません。

 野手では、やはり智弁学園(奈良)の岡本和真内野手が抜けていました。飛ばせる能力は代え難い魅力です。今年のドラフトでは大学、社会人を含めても、いの一番に名前が挙がってくる野手になるのでは。

 同じくスケール感という意味では、九州国際大付(福岡)の清水優心捕手が挙がります。185センチ、88キロと大きい割に動ける選手。ファームのコーチは喜びますね。肩が強く打撃もいい。捕手は勉強することが多いですが、1軍のレギュラーを取れる選手になれそうです。

 センスのよさを感じたのは、大阪桐蔭の香月一也内野手。やや小柄ながら腰の据わったスイングができます。先輩の森友哉(現西武)とまではいきませんが、パンチ力のあるバッティングは、今大会では目立ちました。

 高崎健康福祉大高崎(群馬)の脇本直人外野手も、センスが光ります。50メートル走6秒1の俊足で6盗塁を決めましたが、走れるというのはプロでも大きな武器。打撃がよくなれば、1軍の戦力になる確率はより高まります。順調に伸びていけばモノになるのではないか、という素質が見えました。

 先ほども述べましたが、今年の高校生は、地方大会で敗れたドラフト候補が多かった。その意味では、スカウトの眼力がより問われる年といえます。いわゆる“隠し球”や将来的な伸びしろを持った選手を、スカウトがどう評価するか、ですね。

 甲子園では、小器用な選手は多かったけど、主役を張れる選手はほとんどいませんでした。今年のドラフトは、高校生の指名人数が減るかもしれません。そうなると、全体の人数も減る。少数精鋭のドラフトになる可能性があります。

 ◆菊地敏幸(きくち・としゆき)1950年3月18日生まれ。法政二高から芝浦工大を経てリッカー。現役時代は強打の捕手。89年にスカウトとして阪神に入団し、藪、井川、鳥谷らを担当。13年限りで阪神を退団した。

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