安田記念・G1

モダン

父子マイル王

2010/6/06 東京競馬場

▼安田記念・G1
1着 ショウワモダン 後藤 浩輝  
2着 スーパーホーネット 藤岡 佑 1/2
3着 スマイルジャック 三 浦

 混戦を制したのは、8番人気の伏兵ショウワモダン。ダービー卿CT、メイSの連勝の勢いをそのままに、G1初挑戦にしていきなり金メダルを獲得した。勝ちタイム1分31秒7はレースレコード。99年の優勝馬エアジハードに続き、父子制覇を達成した。02年にアドマイヤコジーンで初G1を獲得した後藤は、思い出のレースを勝って再び男泣きした。

エイシンフラッシュ

激しい先頭争いを繰り広げるスマイルジャック(右)とショウワモダン(左から2頭目)

 

後藤男泣き

思い出のレースで再び歓喜

エイシンフラッシュ

ショウワモダンで安田記念を制しステッキを高く掲げる後藤

 

 

 レース中の後藤の頭には、02年安田記念の光景がよみがえっていた。自身が初めてG1を制したレース。そのときに騎乗していたアドマイヤコジーンと今回のショウワモダンが完全にだぶっていた。「初めて勝った安田記念を思い出した。手応え、雰囲気、自分自身の気持ち。すべてが一緒だった」。あの歓喜から8年が経過し、再び安田記念で頂点へ。ウイニングランを終えた後藤は馬の首に顔をうずめ、8年前と同じく男泣きした。


 道中は10番手を追走し、4コーナー手前から徐々に進出。直線で外へ出して、そこから一気にはじけた。2着のスーパーホーネットとは半馬身差。勝負の分かれ目は、直線の追い出しの瞬間にあった。先週のダービーでローズキングダムに騎乗した後藤は首差の2着に敗退。この悔しさが自分の中に深く残っていた。

 

絶妙な追い出し 「先週までの自分だったら、早めに追い出して、結果、負けていたかもしれない。先週のことを思い出しながら、まだだ、まだだと我慢して追い出した」。追い出しをひと呼吸遅らせたことが、ショウワモダンに最後の力を与えた。「最後の100メートルは一心不乱に追った」。この瞬時の判断が勝利をたぐり寄せた。

 

 今年で6歳。39戦目にしてG1初挑戦だったが、杉浦師はこの一戦にかけていた。初めて装着したトゥアウター蹄鉄。通常のものよりも鉄頭部の鋼片が高く、グリップ力を高める効果がある。「使ったのは初めて。これで時計が詰められればと思って」。この作戦が見事にはまった。また前走は競馬場へ着いてからのイレ込みが激しかったので、今回はほかの馬がいない静かなところに馬房を確保。これも功を奏した。

 

 今後については「夏は弱いので休ませたい。秋は香港も考えている」と指揮官。マイル中心のレースを使い、海外遠征も視野に入っている。また後藤自身も6月下旬から1カ月間、英国遠征を予定している。ニューマーケットに拠点を置くチャップルハイム師の元で自分の腕を磨き上げるつもりだ。

 

 海外へ視野を広げてステップアップを図り、お互いにより高いところを目指そうとしている人馬。このコンビが秋にどんな活躍をしてくれるか、今から楽しみだ。

 

 

 

内田博

喜びのゴリラポーズをみせる後藤

 


【山岸オーナー歓喜の初美酒】

 

 オークス、ダービーに続き、3週連続で生産馬がG1を制した社台ファーム。代表の吉田照哉氏は「この勝利はお父さんのエアジハードにとって大きいんじゃないかな」と産駒数が減少傾向にある父の人気復活につながる勝利を喜んだ。一方、馬主歴4年、G1初挑戦でVを決めたのが山岸桂市氏。「土曜に杉浦師と会ったとき、いつもと表情が違ったから“何かやってくれるな”とは思っていた。でも、ゴールの瞬間は何が何だか分からなかったよ」と歓喜の瞬間を振り返っていた。

 

 

 

 

皇成こん身ムチ20発も及ばず

スマイル3着惜敗


 残り1Fから約20発にも及んだ三浦のこん身の右ムチ連打もあと一歩、実らなかった。スマイルジャックは1/2、頭差の3着。中位のインでロスなく運ぶと、昨年(9着)はモロに前が詰まった直線も馬群をかき分けるように伸びてくる。だが、使い込まれてきた今の東京は外がやや有利。外差しの上位2頭の勢いにはわずかに及ばなかった。
 「悔しいですね」と三浦はレース後、報道陣に囲まれると唇をかんだ。「スムーズに折り合ったし、自分からハミを取って内からうまくスルスル伸びてくれたんですが。最後は脚色が一緒になってしまいました」。それでも自身にとっては、08年のデビュー以来、通算19度目の中央G1騎乗で初めて馬券圏内に奮闘。「スカッと納得のいく競馬ができたのはダービー(08年2着)以来」と小桧山師も、スムーズに運んだ好騎乗をたたえた。
 若武者は15日から、昨年に続き英国へ武者修行に出向く。「いい競馬はできた。この馬らしさは出せました」。技術により一層の磨きをかけて、秋こそはジャックにG1タイトルをもたらしたい。

 

 

トライアンフマーチ

はじけず4着

 

 はじけなかった。2番人気トライアンフマーチは4着。余裕の手応えで直線に入り、鞍上は何度も振り返って後続の動きを確かめた。ただ、突き抜けるほどの脚はなかった。「自分としては完ぺきな乗り方。脚をためながら前々で。いい感じで4角を迎えたが、そこからが」と内田博は首をかしげる。「何となく伸びたけど」。テン乗りだったとはいえ、期待を下回る伸びに不満げだった。

 

 

リーチザクラウン

内枠に泣き14着

 

 1番人気に応えられなかった。リーチザクラウンは見せ場なく14着に敗れた。「息を入れて走っているけどね。馬込みの競馬に慣れていないので、ほかの馬に寄られるだけで過剰に反応していた。外枠の方が良かった」と安藤勝は振り返った。「フットワークがゆったりとしているので二千ぐらいがいい」と鞍上は中距離を希望。橋口師も「宝塚記念へ行こう」と気持ちを切り替えていた。

 

 





ショウワモダン…牡6歳。父エアジハード、母ユメシバイ(母の父トニービン)。馬主・山岸桂市氏。生産者・北海道千歳市 社台ファーム。戦績・39戦10勝。重賞・10年ダービー卿CTに続き2勝目。総収得賞金・348、250、000円。杉浦宏昭調教師は初勝利、後藤浩輝騎手は02年アドマイヤコジーンに続き2勝目。

Copyright(C) 2011 デイリースポーツ/神戸新聞社 All Rights Reserved.
ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。ご注意下さい。
当サイトは「Microsoft Internet Explorer 4.x」「Netscape Navigator/Communicator 6.x」以上を推奨しています
Email : dsmaster@daily.co.jp