皐月賞・G1

ヴィクトワール

1冠

2010/4/18 中山競馬場

▼皐月賞・G1
1着 ヴィクトワールピサ 岩田康誠  
2着 ヒルノダムール 藤田伸二 1 1/2
3着 エイシンフラッシュ 内田博幸 ハナ

 1番人気に支持されたヴィクトワールピサがインから力強く抜け出し、5連勝で1冠目を制した。武豊の負傷で大役が回ってきた岩田は、プレッシャーをはねのけて見事にエスコート。代打の役目をきっちりと果たし、史上4人目となる皐月賞連覇を成し遂げた。2着にはヒルノダムール、3着には伏兵エイシンフラッシュが入線。4着ローズキングダムまでに日本ダービー(5月30日・東京)の優先出走権が与えられた。

ヴィクトワール

直線内から抜け出し皐月賞を制したヴィクトワールピサと岩田

 

皐月賞連覇は別格の味!!

代打・岩田が豪快アーチ

 

 頼れる代打が豪快なアーチを放った。3歳の頂点に立ったヴィクトワールピサの背で岩田は何度も拳を突き上げた。


 ポッカリとあいた1頭分のスペース。鞍上はヴィクトリーロードを見逃さなかった。直線入り口は馬場の真ん中にいたが、瞬時に切り替えて右斜め前の内ラチ沿いへと突っ込んだ。「1日乗っていて、外の方が水分を含んでいると感じた。馬のワンチャンスを生かした。能力がないとそこは行けないコース。冷静にエスコートできたし、最高のレース。すごいパフォーマンスを見せられた」。岩田は会心の騎乗を誇らしげに語った。

 

 百戦錬磨の鞍上ですら経験したことのないプレッシャーだった。3月27日に主戦の武豊が落馬負傷となり、ヴィクトワールピサの鞍上に指名された。目下4連勝中。本番では1番人気が予想され、負けられない立場だ。「オファーがあったときは“ヨシッ”って思ったけど、レースの日が迫るにつれて自分自身が追い込まれた」。普段から相棒に接し、追い切りにまたがることで改めて能力の高さを感じる。コンタクトを取るたびに鞍上の胸には期待と重圧が交差した。


 武豊からのひと言が支えになった。「“自信を持って、勝ってこい”と言ってもらって安心した。硬くなっても仕方がない。負けるイメージはなかった」。直前のレースで落馬しても、気持ちはブレない。「“痛い”なんていってられん。それがプロ」。大役を果たした岩田はウィナーズサークルで市川義美オーナーと抱き合い、涙をこぼした。「先生とオーナーの顔を見ると自然とこみあげてきた。オーナーの初G1を勝たせていただいた。落とせないレースだったので」。皐月賞連覇はまた別格のVだった。

 

3冠の資格が与えられた皐月賞馬が今度はダービーで2冠目を狙う。レースのあと、市川オーナーは「豊くんとは手術の前に電話で話して、ダービーに乗ってもらうことがすでに決まっている」と主戦の武豊に手綱が戻ることを明言した。岩田も分かっている。「重厚感があってウオッカの感覚。東京の2400メートルでも自然と結果が出ると思う。豊さんも復帰されて、コンビを組んでダービーを狙ってもらいたい」。ダービー制覇、そして史上7頭目の3冠へと連勝街道を突き進む。

 

 

 

岩田

ヴィクトワールピサの鞍上でガッツポーズを決める岩田

 


 

ヒルノダムール

2着に惨敗したヒルノダムール

藤田無念…ダムール2着 最後の直線

 

 大外から矢のように伸びたヒルノダムール。メンバー最速の上がり3F35秒0の末脚を繰り出したが、ヴィクトワールピサには1馬身半届かなかった。
 「4コーナーで詰まったのが…。まあこれも競馬やから仕方ないわ」。藤田は無念さを押し殺して、淡々とした口調で話し始めた。道中は後方を追走。4角でも手応えは十分に残っていた。しかし、直線を向くあたりで窮屈なシーンがあり、一瞬ブレーキがかかってしまった。「スムーズに行けていたら…」。悔しさの残る競馬だった。
 それでいて2着まで追い込むのだから、能力の高さは疑いようがない。「評価が低過ぎた(6番人気)のが、すごく悔しかった。でもこれで強いのは分かったやろ。左回りの方が上手な馬やし、距離が延びるのもいい。広い府中なら逆転できる」。そう言うと藤田は、胸を張って競馬場を後にした。
 昆師は「勝ち馬の方がスムーズに運べていたからね。遅生まれ(5月20日生まれ)でまだ実が入っていない状況で、これだけやれた。ダービーは2F伸びるし、紛れのないコース。末脚は一級品やからね」と期待を込めた。5月30日、東京。陣営の心はすでに競馬の祭典へと向いている。

 

 

3着エイシンフラッシュ 激走!!殊勲の銅メダル

 

 殊勲の銅メダルだ。京成杯から直行で大舞台へ臨んだエイシンフラッシュが、中団から追い上げて3着。2歳王者ローズキングダムに先着する力強い走りを見せた。内田博は「前で勝負している馬の後ろにつけて楽ができた。それが最後の脚につながってくれた」と分析。久々の激走に「順調さを欠いていたようだけど頑張ってくれた」とレースぶりを評価した。

 

 

4着ローズキングダム 小牧悔し復権ならず  

 

 スプリングSの3着に続いて今度は4着。2歳チャンピオンのローズキングダムがまたしても土にまみれた。道中は中団から競馬を進め、直線で馬群を割って伸びかけたが、突き抜けるまでには至らなかった。小牧は「直線で前があいたときにいけると思ったが、最後の脚が違っていた。うまく流れには乗れていたけど」と悔しそうな表情を浮かべた。

 

 

5着アリゼオ 巧走も直線はじけず  

 

 前哨戦のスプリングSを制したアリゼオ。好位から流れに乗ってうまく競馬をしたが、直線ではじけず5着に敗れた。気難しいところがあり、前走も陣営がいろいろと工夫を重ねて重賞タイトルをもぎ取った。それだけに、横山典は「返し馬で歩けていたし、これから経験を積めば良くなると思う。きょうは頑張ってくれたよ」と納得の表情を浮かべた。





ヴィクトワールピサ…牡3歳。父ネオユニヴァース、母ホワイトウォーターアフェア(母の父マキャヴェリアン)。馬主・市川義美氏。生産者・北海道千歳市 社台ファーム。戦績・6戦5勝。重賞は09年ラジオNIKKEI杯2歳S、10年弥生賞に続き3勝目。総収得賞金・240、974、000円。角居勝彦調教師は初勝利。岩田康誠騎手は09年アンライバルドに続き2勝目。

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