安田記念・G1

ウオッカ

強かった

2009/6/7 東京競馬場

▼第59回安田記念
1着 ウオッカ 武豊 1:33.5
2着 ディープスカイ 四位洋文 3/4
3着 ファリダット 安藤勝己 1

 ダービー馬対決を制し、女帝にまた新たな勲章が加わった。圧倒的1番人気のウオッカが直線で馬群に包まれながらも、ラスト1Fで強烈な瞬発力を発揮し、ヴィクトリアマイルに続くG1連勝で、このレース連覇を飾った。牝馬では最多のG1・6勝目、牝馬初の獲得賞金10億円突破の快挙も達成した。なお、2着はディープスカイ、3着にはファリダットが入った。

写真・安田記念を制したウオッカ(中)

ディープスカイ(右)を鋭い末脚で差し切り、安田記念を制したウオッカ(中)

 

ユタカ脱帽

ラスト1F馬群抜け出した!

 

【連覇決めた】

 

 まさに生けるカリスマだ。絶体絶命のピンチをはね返し、ウオッカが連覇を達成した。スムーズなエスコートが最後の直線で暗転。前が壁になって完全に進路を失う。万事休すと思われたが、そこから奇跡的な強襲で前を行くディープスカイを捕らえた。「きょうは下手に乗りました。馬をほめてあげて下さい」と武豊。名手も今回ばかりはその底力に脱帽した。


 レース後、先に引き揚げてきたディープスカイの四位は角居師と目が合うなり、あきれたような表情で首をひねった。そして、年内引退を表明していた谷水オーナーも再考を思わせる言葉を残した。それも当然か。逆境を力で打破した。それだけのパフォーマンスを府中の芝に刻み込んだ。


 好スタートから中団のインをロスなく追走したが、残り四百メートルで窮地に陥った。横一線となった先行馬が眼前に立ちはだかる。完全に閉ざされた進路。ユタカは「おじさんの満員電車に乗って、降りたくても降りられない。いじめられているような感じ」と表現する。ただ、ここからが女帝と言われるゆえん。ラスト1Fでわずか1頭分のスペースがあくと、ひるむことなく突っ込んで鬼脚が光を放つ。たまりにたまったフラストレーションを一気に吐き出した。


 直線にその強さを凝縮した勝利に「ドキドキしたが、状態が最高に良かった。今が一番強いんじゃないか、と思うぐらい充実している。苦しいレースだったが、それでも勝った。彼女の強さを再認識できた」とユタカは信頼感を口にした。牝馬最多のG1・6勝目、獲得賞金も牝馬初の10億円に到達。「ヒヤヒヤしました。かわせるとは思っていなかった。馬に感謝しています」。圧倒的1番人気の重責を果たし、角居師は胸をなで下ろす。


 今年3月。前年の敗戦を糧に挑んだドバイ遠征で大敗を喫し、チーム・ウオッカは計り知れないダメージを受けた。気を取り直して臨んだヴィクトリアマイルを圧勝、そして今回のG1連勝で完全に自信と輝きを取り戻した。だからこそ、原因不明の敗戦も、ユタカが「(ドバイは)お酒が駄目な国だからかな」とジョークで笑い飛ばす。


 鞍上は強い思いを口にした。「勝つことが義務だと思って、この馬には乗っている」。あと1つG1を勝てば、ディープインパクト、シンボリルドルフなどに肩を並べる。歴史的名牝、その勇姿を見逃すことはできない。



写真・ウオッカと武豊騎手

ウオッカと武豊騎手


【「年内引退」再考示唆 谷水オーナー「引き際の見極め慎重に」】


 直線の攻防を「肝を冷やしたどころじゃなかった」と振り返った谷水雄三オーナー(70)は「頭の下がる思い。天からの授かりものです」と愛馬の強さに感服。ファン投票の中間発表で1位に支持されている宝塚記念への参戦に関しては「馬の様子を見てから」と明言を避けたが、「秋は天皇賞、ジャパンCを使うことは決めている」と明かした。さらに「引き際の見極めは慎重にしたい。5歳を迎えて充実期を迎えた感じもある」と、ヴィクトリマイル勝利後には年内いっぱいと明言した引退の時期の再考とも取れるコメントを残した。

 



スカイ2着 昆師宝塚記念へ「上積みあると思う」 


 頂点を極めた馬のプライドがぶつかり合ったゴール前、ディープスカイは猛追してきた先輩にかわされ、2着に敗れた。中団でうまく折り合いをつけ、直線内からいったんは先頭へ。押し切りを図ったが、ゴール寸前でウオッカの切れに屈した。
 「抜け出したときはひと踏ん張りできるかと思ったが、最後は脚が上がってしまった。悔しいけど、きょうは仕方ない」と四位。デビュー以来最高の524キロ。プラス14キロの大幅な馬体増がラストの伸びに影響した。昆師は「宝塚記念(28日・阪神)があるから、ここをピークに持っていけなかった。内容としては完ぺきだったが、それ以上に(ウオッカが)強かった」と敗因を挙げつつ、勝ち馬に敬意を表した。
 G1連勝を出走条件に挙げていた凱旋門賞・仏G1(10月4日・ロンシャン)については言及しなかったが、宝塚記念に向けて「上積みはあると思う」と指揮官。春のグランプリでの3度目のG1制覇に視線を向けた。


ファリダット 大健闘3着

 

 最後方からの直線一気。メンバー最速の上がり3F35秒3の末脚を繰り出したファリダットが、カンパニーとの際どい3着争いを鼻差でしのいだ。「しまい勝負にかけようと思っていた。伸び出したときは凄い脚を使ってくれたけどね」と安藤勝。母ビリーヴをG1制覇へ導いた名手は、「上位の2頭も強いが、この馬も強い」と10番人気での健闘を高く評価した。


カンパニー 大外猛追4着  


 先週のダービーを制した横山典とのコンビで期待されたカンパニーは、大外からよく伸びたが4着。「ウオッカは強い。こっちは残り四百メートルをしっかり追ったのに、向こうは百メートルだけ。それで負けたんだから仕方ない。でも、人間でいえば50歳のオジサンなのに、よく頑張ってるよ」と横山典はサバサバした表情。次走の宝塚記念で悲願のG1制覇を目指す。


スーパーホーネット 伸びず7着  

 

 潔く完敗を認めた。3番人気スーパーホーネットは、中団で流れに乗るも伸び切れず7着。「直線でうまく外に出せたし、前があいた時には勝てるかとも思った。一番スムーズな競馬ができたし、力は出し切りました」と藤岡佑はサバサバした表情で振り返った。「もう一度鍛え直して、秋に頑張ります」。2年連続2着のマイルCSで、次こそG1の栄冠を狙う。





牝5歳。父タニノギムレット、母タニノシスター(母の父ルション)。馬主・谷水雄三氏。生産者・新ひだか町 カントリー牧場。戦歴・22戦9勝(うち海外3戦0勝)。重賞・06年阪神ジュベナイルF、07年チューリップ賞、ダービー、08年安田記念、天皇賞(秋)、09年ヴィクトリアマイルに続き7勝目。総収得賞金1、019、911、800円(うち海外28、689、800円)。角居勝彦調教師は08年ウオッカに続き2勝目、武豊騎手は90年オグリキャップ、95年ハートレイクに続き3勝目。

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