オークス・G1

牝馬2冠

ブエナ

2009/5/24 東京競馬場

▼第70回オークス
1着 ブエナビスタ 安藤勝己 2:26.1
2着 レッドディザイア 四位洋文 ハナ
3着 ジェルミナル 福永祐一

 驚異の脚、根性だ。レース史上5位となる単勝支持率57・9%の圧倒的な支持を受けた、桜花賞馬ブエナビスタがケタ違いの瞬発力でV。5連勝で03年スティルインラブ以来の牝馬2冠を達成した。次なる戦いの舞台は凱旋門賞・仏G1(10月4日・ロンシャン)での世界挑戦が濃厚。壮大な夢が描かれる。鼻差2着は直線で先に抜け出したレッドディザイアで、3着はジェルミナル。桜花賞組が上位を独占した。

写真・ブエナビスタ

ゴール前でレッドディザイア(右)をかわしたブエナビスタ

「仕掛け遅れた」

アンカツ救った!鼻差届いた!!驚異の鬼脚

 

【アンカツ区切りのGI20勝目「負けなくて良かった」】

 

 上がり33秒6 本能が“敗北”の2文字を許さなかった。鬼神と化したブエナビスタが上がり33秒6の末脚を繰り出し、史上11頭目となる牝馬2冠を達成した。
 
 届かない。スタンドから上がった悲鳴に近い、声援。「内か外か悩んで仕掛けが遅れた」。後方3番手で迎えた4角、安藤勝はちゅうちょした。内有利の馬場状態。「外の方が芝が長くて空回りする」と悪いイメージを抱いていたが、選択した進路は外だった。密集を避け、最後は瞬発力を信じた。直線半ばでは、最も警戒していたレッドディザイアが一気に先頭に躍り出る。「何とか届いてくれ」。鞍上の必死の思いに応えて、絶望的に思えた差が1完歩ずつ縮まる。勝負根性をむき出しにしたブエナは、鼻差でリベンジを阻止した。

 確信はなかった。「勢いはあったが、(かわしたのは)ゴールを過ぎてからかなと」。ウイニングランをせずに帰ろうとしたほど。「負けなくて良かった。馬に助けられたね」と安どの表情を浮かべる。自身区切りのG1・20勝目、桜花賞で自らが記録したクラシック最年長V記録を更新。口取り写真では高々と右手を挙げて、3本の指を天に向かって突き刺した。
 

 松田博師苦笑 93年のベガ以来、松田博師は2度目の牝馬2冠を達成。過去最軽量の446キロで臨んだが「いつもと変わらなかった。ダービーに行っても、今の時季ならいい勝負ができる」と自信を持って送り出した。ただ、馬の行く気に任せた鞍上とは異なり「真ん中よりも前(のポジション)に行くと思っていた」と予想と反した展開に苦笑いした。

 

 次なるターゲットは世界へ。勝利を絶対条件としていた凱旋門賞行きの切符を手にした。「状態を見て、馬主が決めること。(出走なら)斤量は魅力だし、チャンス」。昨年、3歳牝馬のザルカヴァが優勝。54・5キロの斤量は、古馬の牡馬とは5キロのアドバンテージがある。8頭の日本馬が厚い壁に阻まれてきた。日本競馬40年の悲願が託される。世界一美しいと評される、ロンシャン競馬場の絶景が待っている。



写真・安藤勝と小池徹平

安藤勝(左)を祝福する小池徹平


【さあ凱旋門賞 オーナーサイド挑戦に前向き 】


オーナーサイドであり、生産者のノーザンファーム代表を務める吉田勝己氏は凱旋門賞挑戦へ非常に前向きだ。「2冠達成の条件をクリアしたからね。チャンスは3歳牝馬しかない」。古馬牡馬が59・5キロなのに対し、54・5キロで出走できる斤量面の有利さを強調した。「違う環境での長期滞在は厳しい。(遠征するなら)凱旋門賞一本になるでしょう」と語った。

 

 

 

ディザイア 生まれた年が悪かった…2着


 誰もが1度はVを確信したに違いない。中団の内々をロスなく運んだレッドディザイアは、直線で馬群を鋭く割ると残り百メートル地点で2馬身のリード。それでもブエナビスタの鬼脚に屈し、桜花賞に続き2着に終わった。
 「前がうまいことあき過ぎた。もうワンテンポ仕掛けを遅らせることができればね」と四位。JRA通算1万回騎乗のメモリアルレースで、半ば手中に収めていたはずの勝利がスルリとこぼれ落ちた。「勝つにはこの競馬しかない。それにしてもブエナは強い」と、絶望的な位置から追い込んだ勝ち馬に脱帽した。生まれた年が悪かった―。「運がない」との言葉には実感がこもっていた。
 「前走は“よく走った”と思った。今回は悔しいね。でもいい競馬だった」。松永幹師は無念さと満足感の入り交じった表情で話した。夏場は充電の予定。秋こそはG1初制覇を飾りたい。


ジェルミナル 「力通り」3着  

 

“3人娘”の1頭、ワイドサファイアが馬場入場の際に放馬し競走除外に。だが藤原英厩舎の残る2頭は奮闘した。ジェルミナルは桜花賞に続き3着。「イメージ通りに乗れた。ハマったと思ったけどね。ブエナはすごい」と福永。4着ブロードストリートの藤田は「落ち着きがありいい状態だった」と納得顔。「力通りの結果」と藤原英師もサバサバとしていた。


ハシッテホシーノ 力尽き8着  


タレント・ほしのあきの命名馬として注目されたハシッテホシーノは8着。中団から早めに動く積極策も、最後は力尽きた。「もう少し枠が内なら、上の着順を狙えたかも。今後は馬体の成長が課題」と松岡。ほしのは「楽しかった〜。残念だったけど、これだけの大きなレースに出走できたのはすごいこと。また、成長して頑張ってほしーの」と健闘をたたえた。



 

牝3歳。父スペシャルウィーク、母ビワハイジ(母の父カーリアン)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・安平町 ノーザンファーム。戦績・6戦5勝。重賞・08年阪神JF、09年チューリップ賞、桜花賞に続き4勝目。総収得賞金・351、735、000円。松田博資調教師は88年コスモドリーム、93年ベガに続き3勝目、安藤勝己騎手は初勝利。

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