NHKマイルC・G1

強烈一発!238万円

勝ったジョー

2009/5/10 東京競馬場

▼第14回NHKマイルC
1着 ジョーカプチーノ 藤岡康太 1:32.4
2着 レッドスパーダ 横山典弘
3着 グランプリエンゼル 内田博幸

 デビュー3年目の若武者が値千金の一発を放った。藤岡康太騎手(20)=栗東・宮=が騎乗した10番人気ジョーカプチーノが、2番手から直線で抜け出し快勝。従来の記録(04年キングカメハメハ)を0秒1上回る1分32秒4のレースレコードで、人馬ともにG1初Vを飾った。3連単238万円馬券の大波乱を演出し、次戦はダービー(31日・東京)での変則2冠達成も視野に入れる。なお、8位入線のサンカルロは他馬の走行を妨害し18着に降着となった。

写真・ジョーカプチーノ

ファンの声援にガッツポーズで応える藤岡康


思い切り遅刻…ゴールへは一番乗り

ダービー参戦も

 

 黒みがかった芦毛の馬体が、堂々と先頭に躍り出た。藤岡康こん身の右ステッキに応え、ジョーカプチーノが力走。人馬とも夢にまで見たG1のゴールへと飛び込んだ。「最後は夢中で追いました。ものすごくうれしいです」。額の汗をぬぐいながら、二十歳の若武者は笑顔を振りまいた。


 藤岡康は2度目のG1挑戦。プレッシャーが肩にのしかかっていたが、中竹師の明確な指示が気を楽にした。「直線に向くまでは折り合いに専念するように」。その言葉を胸にスタートを決めると、スッと2番手へ。離れた先頭を進むゲットフルマークスを見る形で進み、3番手以下を引き離す絶好のポジションを奪った。「序盤は多少ハミをかんだけど、馬が成長しているのでスムーズに折り合った」。最高の形で直線へと向かった。

 

 ラスト1Fでは早々と先頭へ立ったが、最後まで後続の足音は聞こえなかった。終わってみれば、2着レッドスパーダに2馬身差をつけての完勝。1分32秒4のレースレコードのおまけまで付いた。これでカプチーノとのコンビでは3戦3勝。まさに相性は抜群だ。

 

 実は、騎乗する予定だった最終追い切りで遅刻をする失態。大舞台を前にスタッフに迷惑をかけていた。トレーナーからは「結果を出したらみんなが許してくれる」とゲキが飛んでいたが、その借りを大仕事で見事に返した。プレッシャーから解放され、「きょうは帰ってカプチーノを飲みたいと思います」と最高の笑顔を見せた。

 

 中竹師も開業12年目にしてうれしいG1初制覇。「強い馬だとは思っていたが、さすがにこれだけのメンバー。どこまでやれるかと思っていた」。今年3月、重賞初Vを飾ったファルコンSは3頭使いだったため、複雑な心境で表彰台に立ったが、今回はゴールに入った瞬間「“やった!”と叫んだよ」と満面の笑み。ソエで悩まされ続けていた期待馬の大仕事、その喜びはひとしおだ。

 

 これからは受けて立つ立場になる。次走については「まずは馬の様子を見てから。オーナーと相談して」と明言は避けたが、戦前から「もし折り合って、勝つことができたら向かってもいいかな」と、思いを抱いていた日本ダービーも選択肢にある。将来性豊かなフレッシュコンビが3歳マイル王に君臨。今後の動向から目が離せない。



写真・安藤勝己騎手と蒼井優

プレゼンターの小泉孝太郎(中)と握手を交わす藤岡康(左は上田オーナーの娘・江吏子さん)

 

感動した!? 小泉孝太郎も祝福

【上田オーナー苦節40年やっと…】

 

 オーナー、生産者もG1初Vとなった。“ジョー”の冠で知られる上田けい子さんは馬主歴40年以上の大御所。代理として競馬場に訪れた娘の江吏子さんは「まさか勝てるとは。みんなに感謝したい」と笑顔を浮かべた。またハッピーネモファームの根本明彦代表は04年に生産牧場を始めたばかり。「初めて生産した馬。うれしい限りです」と快挙達成を喜んだ。


 

 

上位人気3頭総崩れ…
カプチーノに飲まれた

 

ブレイク 9着
アイアン 8着
サンカルロ降着 18着

 

 1〜3番人気馬が、そろって末脚不発に終わった。1番人気ブレイクランアウトは9着。「まさかの展開。狙っていたレースで自信はあったのに…」と武豊は唇をかむ。戸田師も「終始、外を通らされてスタミナを奪われた感じ」と悔しさをにじませ、「仕切り直しの気持ちで」とダービーでの巻き返しを誓った。


 2番人気アイアンルックは、8位入線→18着降着となったサンカルロ騎乗=吉田豊のラフプレーの被害をモロに受けて8着。「あの時点で馬が戦意を喪失。キャリアのある馬なら立て直して伸びただろうけど」と小牧。獲得賞金的にダービーへの出走は微妙となった。

 

 加害者の吉田豊は「下手に乗った」と言葉少な。4角、直線の外斜行で各開催4日間、16日から6月7日まで計8日間と異例の騎乗停止処分(1レースで処分が重なったのは史上2度目)が科せられた。


レッドスパーダ 届かず2着   

 

 抜群のスタートから好位4番手を追走。レッドスパーダは直線で脚を伸ばしたが、勝ち馬を捕らえるまでには至らなかった。「熱発明けで周りは心配していたけど、状態は良かったよ。よく頑張った」と横山典は健闘をたたえた。「いい競馬をしたけど、(道中で)前の2頭が離れ過ぎたな」とは藤沢和師。ダービー参戦については「可能性は低いな」と否定した。

 

グランプリエンゼル 3着   


「淡々と流れる展開で、自分のペースで行けた。3着は褒めてあげたいね」(内田博)


マイネルエルフ 4着   

 

「折り合いがついていたら、3着はあったかもしれない」(松岡)

 

 

 

 

ジョーカプチーノ…牡3歳。父マンハッタンカフェ、母ジョープシケ(母の父フサイチコンコルド)。馬主・上田けい子氏。生産者・浦河町 ハッピーネモファーム。戦績・9戦4勝。重賞・09年ファルコンSに続き2勝目。総収得賞金・171、676、000円。中竹和也調教師、藤岡康太騎手ともに初勝利。

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