菊花賞・G1

浜中

スリーで獲った

2009/10/25 京都競馬場

▼第43回菊花賞・G1
1着 スリーロールス 浜中俊 3:03.5
2着 フォゲッタブル 吉田隼人 ハナ
3着 セイウンワンダー 福永祐一 1 1/4

 若武者が“乱菊”を制した。浜中騎乗の8番人気スリーロールスが、ゴール前の競り合いを鼻差でしのいでV。人馬ともにG1初制覇を決めた。今後は有馬記念(12月27日・中山)に目標を置くが、ジャパンC(11月29日・東京)も視野に入れる。2着は内から猛追したフォゲッタブルで、ダンスインザダーク産駒のワンツーとなった。3着はセイウンワンダーで、1番人気のリーチザクラウンは5着に敗れた。

写真・スリーロールス

菊花賞を制したスリーロールス、浜中は指にキス

 

アンライ、リーチ、ブエナ

出走伝説の新馬戦で4着

 

【物見ロールス乗りこなした】

 

 次世代を担う、東西を代表する若手ジョッキーが、鼻面を並べてゴール板を貫いた。96年の覇者ダンスインザダーク、その産駒2頭の壮絶なスタミナ勝負。高々と左手を挙げたのは、スリーロールスの手綱を取った西の若武者・浜中だった。


 ゴール後は手綱を持ち替えて、右手で力強くガッツポーズ。「着差はわずかでしたが、勝ったと確信しました。喜びを抑え切れませんでした」。デビュー3年目の二十歳が混戦を制し、人馬ともに待ち望んだ初めてのG1の勲章を手に入れた。


 (1)枠(1)番から勢い良く飛び出したが、あわてることなく手綱を抑える。「リーチザクラウンが行くのは想定通り。ほかの馬のことよりも自分の馬を信頼して“ゆっくり、ゆっくり”と進めた」。理想的な形で勝負どころまでエスコートした。

 

 迎えた直線、逃げるリーチに照準を合わせる。「小さいころからの夢だった」と語るG1制覇が近づいてくるが、勝利の女神は簡単にほほ笑んではくれない。ラスト1Fで先頭に躍り出ると、ターフビジョンに物見をして大きく外へ膨れた。


 内から吉田隼&フォゲッタブルが猛然と襲いかかる。突然の試練に無我夢中だった。ステッキ連打で叱咤(しった)しながら長い直線を憎んだ。「また伸びてくれた」。気迫は伝わった。再びエンジンに火がつき、最後は鼻差でしのぎ切った。

 

 1着アンライバルド、2着リーチザクラウン、3着ブエナビスタで決まった“伝説の新馬戦”の4着馬。武師は「あえて強いところにぶつけた」という。母は自ら管理したスリーローマン。頼み込んでダンスインザダークを種付けし、誕生したのがロールスだった。

 

 5月に2勝目を挙げると放牧で成長を促し、大目標の3冠ラストにたくましい姿で立った。トレーナーも平地G1は初勝利だ。「やっとゴールドウェイ(84年2着)のうっぷんを晴らしました」と喜びをかみしめる。

 

 次なるターゲットは有馬記念が有力だが、師は「状態がいいようなら、ジャパンCに行きたい気持ちもある」と夢を膨らませる。「まだまだ力をつけると思うし、この馬の成長力は武器になると思う」と浜中。無限の可能性を秘めるコンビから目が離せない。

 

 


【75歳永井オーナー長かった初クラシック】

 

 悲願のクラシック制覇だ。スリーロールスのオーナー、永井商事(株)の永井啓弐代表(75)は「強かった。念願がかないました。気持ちがいい」と満面の笑み。サイレンススズカなど、スズカ、サンレイの冠名でも知られる代表名義の馬でもつかんでいないクラシックのタイトル。自動車業を営んでいることから、スリーロールスの馬名はロールスロイスに由来する。「母スリーローマンの“ロ”で何かないかな、と。またG1に挑戦していきたい」と声を弾ませた。

 


【武牧場山ノ井場長いきなり菊V】

 

 生産者の武牧場・山ノ井紀明氏(37)は、自身が場長を務めてからの初G1制覇が、いきなりクラシックの大タイトル。「信じられない。リーチザクラウンの外に出した時は声が出ましたね」とレース後も興奮気味。「牧場では、おっとりしていて手の掛からない馬でした。逆に印象がないくらい」と、想像を大きく超える出世に驚きと喜びの表情が入り交じっていた。

 

 

写真・リーチザクラウン

武豊のしったに応え必死に逃げ込みをはかるリーチザクラウン

 

 

リーチ またアガれず… 5着


 最後の1冠にも手が届かなかった。1番人気に支持された、リーチザクラウンは5着。軽快に飛ばし、向正面では2番手に12馬身ほどのリードを奪ったが、ゴール寸前で後続馬に飲み込まれた。武豊は「思い通りの形だったけど、少し距離が長いかな。でも、菊花賞が3000メートルというのは決まっている話。しょうがない」と肩を落とした。
 燃えやすい気性も災いした。「この間よりもイレ込んでいた。もう少し力を抜いて走ってくれれば良かったんだけど…。克服しなければならないテーマ」と課題を口にする。菊花賞ウイーク、主戦は土日で8勝を挙げ、騎乗機会8連続連対(最多は武豊と安藤勝の9回)を達成。その勢いを持ってしても、クラシックの頂点は遠かった。
 この菊で自身と同じレースで初陣を迎えた3頭が、クラシックの栄冠をつかんだことになる。“伝説の新馬戦”の2着馬は、今回もまた、自らが歓喜を味わうことはなかった。それでも、少しずつ成長は見られる。「“ノーコントロール”だった」と話した皐月賞(13着)ほどではなく、鞍上にうまくなだめられた。ただ、距離の壁を越えることができなかった。


ヤマニンウイスカー 6着

 

 「前に壁がないと脚がたまらない。(直線も)反応はあったが、勝ち馬に寄られてからさっぱりだった」(和田)

 

セイクリッドバレー 7着 


 「距離は長いかなと思っていたが、頑張っていますよ」(松岡)


 

シェーンヴァルト 8着  

 

 「ずっとハミをかんで走っていた。現状では3000メートルは長いが、それでも踏ん張った。能力は高いですね」(秋山)





スリーロールス… 牡3歳。父ダンスインザダーク、母スリーローマン(母の父ブライアンズタイム)。馬主・永井商事(株)。生産者・北海道新ひだか町 武牧場。戦績・11戦4勝。重賞初勝利。総収得賞金・187、955、000円。武宏平調教師、浜中俊騎手ともに初勝利。

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