ホーム > 競馬・レース > 08プレイバック >朝日杯フューチュリティS

朝日杯フューチュリティS

ワンダーフル
王者だ

2008/12/21 中山競馬場

▼第60回朝日杯フューチュリティS
1着 セイウンワンダー 岩田 1:35.1
2着 フィフスペトル ルメール アタマ
3着 ブレイクランアウト 武豊 1/2

 漆黒の馬体が、師走の中山で躍った。2番人気のセイウンワンダーが内から抜け出し、見事に2歳牡馬チャンピオンに輝いた。新潟2歳S1着以来となる105日ぶりの勝利は、レース史上で最長のロングシュートV。力の違いを見せつけた。ルメール騎乗のフィフスペトルが頭差及ばず2着。武豊復帰で注目を集めた1番人気のブレイクランアウトはゴール直前で伸びを欠き、3着に敗れた。

セイウンワンダー


インから伸びて朝日杯FSを快勝したセイウンワンダー(左)

有馬騎乗停止の憂さ晴らし!岩田今年G14勝目


【的確な状況判断】

 豪快に、そして会心のVゴールを決めた。セイウンワンダーが内から鋭く抜け出し2歳牡馬の頂点に輝いた。新潟2歳Sを制してから105日ぶりの実戦復帰でつかんだ栄冠。90年リンドシェーバー(77日)をしのぐ、レース史上最長のロングシュートVとなった。

 な内容だった。(3)番枠から岩田は中団のインへ誘導。「ゲートはスムーズ。行く馬を行かせていいポジションが取れた」。直線で進路があくと、迷うことなく突っ込む。この的確な状況判断も勝因のひとつだった。今年の中央G14勝目を飾り、年間最多G1獲得騎手が確定。「内は荒れていたが、ボコボコではない。ラチを頼った方が伸びてくれる」。懸命に右ステッキを飛ばすと、フィフスペトルの追撃を頭差しのぎ切った。

 前日の阪神9Rで失格、来月5日までの騎乗停止処分を科せられた。アドマイヤモナークで参戦予定だった有馬記念の騎乗は不可能に。だが、自身にとって今年最後のG1を最高の結果で決めたとあって表情は晴れやかだった。「年明けから一生懸命頑張ります」と09年も最高のパフォーマンスを見せることを誓った。

眞鍋かをり(左)と岩田(右)


朝日杯FSをセイウンワンダーで制し、プレゼンターの眞鍋かをり(左)と笑顔で握手を交わす岩田

【領家師GI2勝目】

 95年桜花賞のワンダーパヒューム以来となるG12勝目を飾った領家師のさい配もまた、お見事だった。今年のJRAブリーズアップセールで最高価格の2730万円で取引された。今回のVが、同セール出身馬のG1初制覇。秘める素質を見抜いたのが師だった。

 ここまでの道のりは決して平たんではなかった。中間に左前の蹄球炎を発症。「東スポ杯2歳Sを予定していたけど、日程的につらいと思って目標を切り替えた」。ぶっつけ本番での出走。だが、指揮官の心は揺れなかった。「これくらいは走ると思っていた。最後詰め寄られたのは3カ月半ぶりの分かな。この馬の精神力はただ者ではない」と最大級の評価でたたえた。

【父子制覇を達成】

 来年は皐月賞(4月19日・中山)を目標に定める。「度胸のあるレースをしてくれる。距離は問題ないと思うので、このまま行ってほしいね」。97年に4戦無敗で2歳No.1に輝いたグラスワンダーとの父子制覇を達成。偉大な父と同様に、2歳戦はすべて最速上がりを記録してみせたのだから素晴らしい。“ワンダーホース”は、クラシック本番でも世代最強をアピールする。

【大谷オーナー感激43年目のG1初V】

 セイウンワンダーのオーナー・大谷高雄氏(78)も感無量だ。馬主になって43年目のG1初制覇となった。「ゴール前はハラハラ・ドキドキ。良かった」とほほ笑んだ。G1出走は93年の桜花賞(グレイスナッキー・13着)以来。セイウンワンダーはJRAブリーズアップセールで購入したが「調教師が丈夫な馬だからと言ってくれて。これからも頑張ってほしい」と来春へ夢をはせた。

 生産者は北海道新ひだか町(三石)の筒井征文氏。息子の康弘氏(35)が代理で表彰台に上がった。「(牧場は)祖父の時代からなのでボクは3代目。初G1?重賞を勝ったのもセイウンワンダーの新潟2歳Sが初めてですから」と花束を抱えながらはにかんだ。

ルメール悔しい頭差   フィフスペトル2着


 わずか頭差で2歳牡馬チャンプの座を逃したフィフスペトル。「勝てると思っていたのに…」と、ルメールは悔しそうな表情を見せた。「道中はリラックスして進めたし、外に出してからもよく伸びてくれた。スピードとスタミナを兼備したいい馬。これからもっと良くなるよ」とたたえる。一方、加藤征師は「直線で一瞬、前が壁になったのが…。あれがなければ勝っていたね」と肩を落とした

ユタカ復帰即Vならず   ブレイク大外まくるも3着


武豊


3着に敗れたものの無事に復帰を果たした武豊

 約1カ月ぶりの実戦となった武豊だったが、復活Vには届かなかった。

 サッパリした表情の中にも悔しさがにじむ。1番人気のブレイクランアウトを駆り、後方から3角過ぎでまくり気味に上昇。一気に勝負に出たが…。「大事に外を回り過ぎたかな。もう少し内を突くとか冒険しても良かったかも。仕掛けもちょっと早かったかな」と振り返った。

 11月23日の京都競馬で落馬し右尺骨骨幹部を骨折。年内復帰は厳しいとされていたが、驚異の回復力でターフへ戻ってきた。大事を取って今週の騎乗は1鞍だけ。「状態は良かったし、G1を勝つ資格のある馬。きょうは人間が休み明けでしたね」と笑った。

 次週の有馬記念では引退レースとなるメイショウサムソンの手綱を取る。「あれだけの馬だから、もうひと花咲かせてあげたい。ファンの多い馬だし、サムソンらしい競馬ができれば。僕の方は大丈夫。来週はもっと良くなりますよ」。最後は力強く、完全復活を誓った。

シェーンヴァルト   北村友悔し7着


 デイリー杯2歳Sの覇者シェーンヴァルトは流れに乗り切れず7着。「ゲートを出てすぐに寄られ、位置取りが悪くなってしまって…。そこから折り合いも欠いてしまいました。器用じゃない馬なので、中山千六の内枠もアダになりましたね」。北村友は不完全燃焼に終わったレースを振り返る。「簡単に勝たせてもらえません」。この日の10Rで騎乗停止になったこともあり、反省しきりだった。


セイウンワンダー…牡2歳。父グラスワンダー、母セイウンクノイチ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・大谷高雄氏。生産者・新ひだか町 筒井征文氏。戦績・4戦3勝。重賞・08年新潟2歳Sに続き2勝目。総収得賞金104、550、000円。領家政蔵調教師、岩田康誠騎手ともに初勝利。

Copyright(C) 2011 デイリースポーツ/神戸新聞社 All Rights Reserved.
ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。ご注意下さい。
当サイトは「Microsoft Internet Explorer 4.x」「Netscape Navigator/Communicator 6.x」以上を推奨しています
Email : dsmaster@daily.co.jp