マイルCS

ブラット 女傑新伝説
14年ぶり牝馬V

2008/11/23 京都競馬場

▼第25回マイルCS
1着 ブルーメンブラット 吉田豊 1:32.6
2着 スーパーホーネット 藤岡佑 3/4
3着 ファイングレイン 3/4

 14年ぶりに秋のマイル女王の誕生だ。ブルーメンブラットが自慢の切れ味でG1初制覇を決めた。勝ち時計1分32秒6は00年アグネスデジタルと並ぶ歴代2位。吉田豊は04年阪神JF以来、約4年ぶりのG1奪取となった。1番人気のスーパーホーネットは2着、3着にはG1馬ファイングレインが入った。また、武豊の落馬負傷により安藤勝に乗り代わったスズカフェニックスは8着に終わった。

ブルーメンブラット


狙い澄ましたように馬群を割って差し切ったブルーメンブラット(中央)

5歳で待望G1獲った!牡馬勢マイった!!

シミュレーション通り


 強い牝馬が17頭のライバルを撃破した。5歳馬ブルーメンブラットがG1初制覇。秋のマイル女王誕生は94年のノースフライト以来、14年ぶりの快挙となった。

 前半は折り合いに専念して、インでじっくりと脚をためた。「うまくあいてくれ」―。そう念じた吉田豊の願いが届く。わずか1頭分のスペースを見逃さなかった。「狭いところでも、ひるまない根性がある。そして、すごい切れを持っている」。過去2戦2勝、彼女を熟知する男は馬と馬の間を狙ってエスコート。末脚を一気に吐き出した。「イチかバチか狭いところを突いた。どれだけ切れてくれるか。いつもぐらい切れてくれれば、と思っていた」。4年ぶりのG1奪取に最高の笑顔を見せた。

 前走の府中牝馬Sが初めての重賞勝ち。23戦目にして、ようやく手にしたタイトルだった。ステップアップを目指し、この中間はいつになくハードに攻めた。「G1ですし、攻めをきつくやった。それなのにプラス10キロ。パワーアップした証しだといいな、と思っていた」。期待に応えた愛馬に石坂師は目を細める。

 指揮官と鞍上、Vへのシミュレーションは同じだった。「思う通りに乗ってくれた。スーパーホーネットが先に出たけど、内から出るしか勝機がないと思っていた」。ゴール前でもうひと伸びして、外から伸びてきた1番人気馬をかわす。その姿に思わず声が出た。先週のエリザベス女王杯にも登録していたが、牝馬同士の戦いではなく、この舞台を選択。「適距離を使わないとかわいそうだと思った」。間違っていなかった。信念を貫いて得た、最高の結果にほおを緩ませた。

 「いいところ取りの馬」と吉田豊は表現する。「牝馬だけど、道中はどっしりと構えていて牝馬っぽくない。でも、切れは牝馬らしい」。これまで挙げたG19勝のうち、牝馬で8勝。名牝の背中を知る鞍上は、この日誕生した新たなヒロインを誇らしげに語った。

 来春には繁殖入りが予定されている。最強コンビの勇姿を再びターフで見られるのだろうか。今後について、石坂師は「マイルCSを最大の目標にしていた。夢に見たレースを勝ってくれたので次は、と言えない。今は白紙」と明言を避けた。牡馬を蹴散らしたG1レースが花道となるのか。歴史に名を刻んだ、スーパー牝馬の動向に注目が集まる。

【これで引退?オーナー示唆】

 5歳秋にして待望のG1ホースとなったブルーメンブラットだが、キャロットファームのクラブ会員規約によって6歳の3月で引退しなければならない。「残念だね。まだまだやれると思うけど。まあ惜しまれて余力を残して、お母さんになるのもいいんじゃないかな」と、同ファーム代表取締役の高橋二次矢氏は複雑な表情。それでも05年のハットトリックに続き、マイルCSは2勝目。「あの時も同じように夕陽がきれいだったのを覚えている。相性がいいんだね。うれしいよ」と、しみじみと語った。


スーパーホーネット


スーパーホーネット(左から2頭目)は2着に惜敗


スーパーホーネット   また銀メダル…


 怒とうの追い込みもあとわずか。1番人気のスーパーホーネットは、またしても銀メダルに泣いた。後方3番手から坂の下りでスパート。直線は大外から一気に勝負に出た。「4角で前に取り付いたとき、これで負けたら仕方がないと思って追った。最後の百メートルで脚が鈍ってしまった…」と藤岡佑は唇をかみしめる。9度目のG1挑戦で2着は3回目。矢作師は「よく走ってくれた。香港でG1を獲る」と、香港マイル(12月14日・シャティン)での巻き返しを誓った。

ファイングレイン   底力見せた3着


 春のヒーローが復活の兆しを見せた。幸の強気なリードに導かれ、春のスプリント王ファイングレインが3着。G1馬の底力を見せた。道中は内枠を利し、コースロスなく追走。直線入り口ではいったん先頭に立つほど。見せ場をつくり、幸は「思っていたよりも折り合いがついたし、もうちょっとでしたけどね。でもだいぶ出来は上向いてきたし、マイルにもメドが立ちました」とパートナーの復活に手応えを感じていた。


カンパニー   猛追及ばず4着


 2番人気カンパニーは猛追も及ばず4着に敗れ、悲願のG1初制覇はまたしてもお預けとなった。道中はスーパーホーネットのすぐ前に位置する形で後方の外々を追走。直線勝負に賭けたが、天皇賞・秋と同じ着順に終わった。「来ているけど、差すまでは行かなかった」と横山典。「秋初戦(毎日王冠5着)が痛い。出が悪くて後ろからになったから…。あれから(テンに)行けなくなっている。よく頑張っているけど」と淡々とした口調で話した。

ブルーメンブラット…牝5歳。父アドマイヤベガ、母マイワイルドフラワー(母の父トップサイダー)。馬主・(有)キャロットファーム。生産者・早来 ノーザンファーム。戦績・24戦8勝。重賞・08年府中牝馬Sに続き2勝目。総収得賞金・349、536、000円。石坂正調教師、吉田豊騎手ともに初勝利。

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