オークス

ポピー 
女王返り咲き

2008/5/25 東京競馬場

▼第69回オークス
1着 トールポピー 池添 2:28.8
2着 エフティマイア 蛯名 アタマ
3着 レジネッタ 小牧 1 1/2

 2歳女王から樫の女王へ。トールポピーが再び頂点に立った。ジャングルポケット産駒としては、クラシック初V。皐月賞、ダービーと涙を飲んだ兄フサイチホウオーの雪辱を果たした。また、トールポピーは直線で内に切れ込んだため審議対象に。失格、降着には至らなかったが、鞍上の池添謙一騎手=栗東・フリー=に関しては、継続的に内側斜行したことが危険行為とみなされ、2日間の騎乗停止処分となった。

エイジアンウインズ

エフティマイア(左端)の追撃をかわし、オークスを制したトールポピー(右端)=東京競馬場

屈辱にまみれた桜舞台から42日

再び輝き放った2歳女王の誇り


【うれしさ半分】

 ただ必死だった。直線で前が壁になったトールポピーが左へと切れ込んでいった。池添こん身の右ムチがうなり、馬群をこじあけて先頭に躍り出た。エフティマイアが猛追してくるが、力勝負なら譲らない。頭差しのいでゴール。2歳女王が、今度は樫を制した。ただ、主戦には笑顔はなかった。「本当に迷惑をかけて、すいませんでした」と開口一番、頭を下げた。審議の対象となり、確定するまでが長かった。失格、降着にはならなかったが、池添は開催2日間の騎乗停止処分を受けた。

 だが、女王のプライドは取り戻すことができた。1番人気の桜花賞で8着。見せ場なく終わった。放牧で激戦の疲れを取り、帰厩後はテンションを上げないよう調整してきた。わずかであったが、プラス2キロでの出走。「返し馬からいい感じで、いいフットワークで走っていた」。池添は手応えをつかんでいた。好スタートを決めると、桜花賞とは違い中団へ。馬場のいいところを回り、チャンスをうかがった。「前走で負けて厩舎の人もボクも悔しい思いをした」。デビュー当初から“オークス向き”と期待されていた。最高の舞台でリベンジができた。

 角居師は複雑な表情を浮かべた。「うれしさ半分、迷惑をかけた気持ち半分」。だが、トールポピーが、厩舎の悪い流れを断ち切ってくれた。先週のヴィクトリアMではウオッカが2着。「力がある馬が勝てなくて、悪いリズムをしていた」と悩むこともあった。

もちろん、めげるわけにはいかなかった。中間も努めて明るく振る舞い、指示を与えた。「気持ちの強い子なので、(レースが)分からないように、カイバを食べさせた。数字的にはさほど変わらなかったが、迫力のある体になった」。一丸となって仕上げた、陣営の努力が実を結んだ。

【米参戦も視野】 

 今後については「休養に入るか、どうするか」と未定だが、同じ厩舎の先輩オークス馬シーザリオが制した、米G1アメリカンオークス(7月5日・ハリウッドパーク)も、選択肢の中の有力候補の一つ。2年連続で牝馬の頂点を極めた女王が、次のタイトルを狙ってツメを研ぐ。


エイジアンウインズ

(左)(上)騎乗停止2日の裁定が下り浮かない表情の池添(左)に話かける福永

    

直線斜行で池添騎乗停止

【降着免れるも後味悪い結末】

 長い審議の結果、トールポピーは降着処分を免れたが、鞍上の池添は最後の直線で内側に斜行したとして、31日から6月1日まで2日間の騎乗停止となった。G1で勝ち馬の騎手が騎乗停止処分を受けた例は、83年日本ダービー馬ミスターシービーの吉永正人、84年皐月賞馬シンボリルドルフの岡部幸雄などがある。

 問題のシーンは残り三百メートル。トールポピーがインに切り込んだ際にオディールを内に押しやり、その後さらに内側に斜行。レジネッタ、ソーマジック、マイネレーツェルが内ラチ沿いまで押し込まれた。

 最終レース終了後に騎乗停止を発表した小林審判部長は「1頭1頭に対しては過怠金が発生するほど大きな被害ではなかった。しかし内容的に危険な騎乗だったことを重く見た」と説明。内側斜行による被害は走行妨害に至らないが、継続的かつ修正動作のない騎乗を危険行為とみなした。

 オークスに出走した騎手の中には「あの不利がなければ勝っていたかも」という者もおり、何とも後味の悪い結果となった。

【吉田勝己氏も驚きの復活劇】

トールポピーの鮮やかな“復活”に、生産者のノーザンファーム代表・吉田勝己氏も驚きを隠せなかった。「よくあそこまで仕上げてくれました。角居先生は大したものです」。体重が大幅に減っていた前走から見事な巻き返し。トレーナーの手腕をたたえた。兄フサイチホウオーはクラシックVを飾れなかったが、妹は頂点を極めた。「本当にすごい馬」と能力の高さに改めて感心していた。



エフティマイア  悔し…またも銀

 桜花賞2着はダテじゃなかった。13番人気のエフティマイアは馬場の真ん中を割って猛追したが、頭差届かず連続の銀メダル。「桜の時よりさらに出来は上がっていたし、4角の手応えも抜群。あともうちょっとだった」と蛯名は悔しがった。それでも鹿戸雄師は「桜も間違って2着になったのではないと思っていた。正々堂々と戦っての結果なので」と納得した様子。アメリカンオークスに関しては「輸送に弱い馬だけに…これから考えます」と話すにとどまった。

レジネッタ  意地見せた3着

 桜花賞馬レジネッタは3着。ゴール前の不利も痛かったが、意地は見せた。それでも小牧は「もう少しだったね。でも、いいレースができました」とサバサバとした表情。内から伸びかけたところを、外からトールポピーに寄られた。「気配は桜花賞の時より良かったし、馬場も気にしてなかった。ちょっとだけハミをかんだところがあって…それさえなければ完ペキなレースができた」。力は出し切った。笑みさえ浮かべて引き揚げていった。

リトルアマポーラ  見せ場なく7着

 混戦の中、1番人気に推されたリトルアマポーラだったが、中団から見せ場なく7着と伸びを欠いた。「何の不利もなくスムーズだったし、考えていた通りの競馬ができた。状態も良さそうだったし…。なのにアレッて、首を傾げるぐらい伸びなかった」と、武幸はぼう然とした表情で報道陣に囲まれた。敗因を重馬場へ問われても「うーん、今日の感じだと得意ではないのかなあ」。それも決定的なものには結びつかなかった。

トールポピー 牝3歳。父ジャングルポケット、母アドマイヤサンデー(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)キャロットファーム。生産・早来 ノーザンファーム。戦績・7戦3勝。重賞・07年阪神JFに続き2勝目。総収得賞金・217、992、000円。角居勝彦調教師は05年シーザリオに続き2勝目、池添謙一騎手は初勝利。。

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