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天皇賞(春)

ジュピタ 
古馬最強

2008/5/4 京都競馬場

▼第137回天皇賞(春)
1着 アドマイヤジュピタ 岩田

3:15.1
2着 メイショウサムソン 武豊 アタマ
3着 アサクサキングス 四位 2 1/2

G1初挑戦のアドマイヤジュピタが壮絶な叩き合いを制し、古馬最強の座を手に入れた。最後の直線は盾3連覇を狙ったメイショウサムソンとのマッチレース。1度は差し返されそうになったが、最後は頭差ねじ伏せる勝負根性を発揮した。今秋は豪州G1・メルボルンCへの遠征を前向きに検討、さらなる高みを目指す。1番人気の昨年の菊花賞馬アサクサキングスは3着に敗れた。

アドマイヤジュピタ

天皇賞を制したアドマイヤジュピタ(右)、2着メイショウサムソン(左)=京都競馬場

サムソンとの壮絶叩き合い制した!!長距離界の一番星

豪州GT・メルボルンC優先出走権ゲット!!今秋遠征へ


【痛恨出遅れに苦笑】

 歴戦の王者と、これがG1初挑戦の新鋭。盾の歴史に残る5歳馬による壮絶な叩き合いは、アドマイヤジュピタに軍配が上がった。

 試練のスタートだった。「やってもうた…と思った。2、3番手のつもりだったから」と岩田も苦笑いで振り返る痛恨の出遅れだ。「仕方がない。三千二百メートルある」。腹をくくった鞍上は慌てず、後方から4頭目で相棒をリードした。ゴーサインを送ったのは、坂の下りにさしかかる2周目3コーナー。先に動くメイショウサムソンを追ってピッチを上げ、4コーナーでは馬体を合わせてこん身の力でステッキを振るった。

 残り三百メートルで先頭へ。あと百メートル、ジュピタが勝った―誰もがそう思った瞬間、1頭になって気を抜いたパートナーの内から、意地で差し返してきたサムソンの影が岩田の目に映った。

 「この馬の瞬発力なら負けないと思っていた。ひたすら願ってゴールまで追った」。がむしゃらに追い続け、王者の抵抗をねじ伏せた。キャリア13戦目で射抜いた盾。「“勝ったよな”と独り言を言ったら、豊さんが“おめでとう”って」。マッチレースを制し、ホッとした表情を見せた。

【友道師涙の初G1】

「会長(近藤利一オーナー)の涙を見て、もらい泣きした」。友道師は自身のG1初勝利に、涙を浮かべて喜んだ。3歳時にはダービー候補と呼ばれながら、骨折で1年4カ月の休養を余儀なくされた。クラシックを棒に振った悔しさは、指揮官の胸に今も残っている。「骨折した日は鮮明に覚えている。無事ならダービーでサムソンといい勝負ができていたと思う。だから、サムソンに勝ってほしいと思っていた」。ボルトを右後肢に入れ、不死鳥のようによみがえったジュピタの闘争心は見事だった。。

 今年から天皇賞・春優勝馬には、秋に行われる豪州G1・メルボルンCへの優先出走権が与えられる。近藤オーナーは「これで休養させようと思う。招待されているし、アドマイヤモナークとともにそれも考えないかん」と遠征に前向きな姿勢を見せた。06年にデルタブルースで制した岩田もやる気をみなぎらせる。「行きたいねえ。絶対、行きたい。この馬やったら勝つぞ」。さあ、次は世界のステイヤーを撃破する番だ。

【近藤オーナー男泣き】     

個人馬主としては、天皇賞史上最多の4頭出しで挑んだアドマイヤ軍団の総帥・近藤利一オーナーが男泣きだ。「ダービーも勝っているけど、どうしても天皇賞だけは欲しかった。夢だった」。9回目の挑戦。ジュピタで悲願を成就させた。駆け寄った友道師と抱き合うと「よくやってくれた」と涙をこぼした。「4頭も出してみんな駄目だったら、どうやって帰ろうかと思っていた。みんなのおかげだよ」。涙をぬぐい、感無量の表情で引き揚げていった。


サムソン意地の2着

【盾3連覇ならずも復活の手応え】     

 史上2頭目の盾3連覇という偉業へ向け、武豊&メイショウサムソンが猛然とアドマイヤジュピタを追い詰める。必死の左ステッキに最後の力を振り絞って伸びた。馬体が合った。しかし、あと一歩、わずかに頭差、夢は届かなかった。

「4角での反応がまだ本物じゃなくて、勝ち馬に先に出られてしまった。最後は盛り返しているんだけど…。三千二百メートル走ってあの着差。惜しかった」と武豊は悔しさいっぱいに振り返った。中団から4角で3番手に上げて勝負に出た。ところが直線に向いたところでアサクサキングスと接触。ややひるんだところを外から一気に行かれた。

「自分で動いて競馬をつくった。頑張っているよ」。高橋成師も悔しさをにじませた。前走の敗戦から、この中間は試行錯誤の毎日。前日はコースへ入れて、闘争心を奮い起こさせた。「これで走らなかったら調教師失格だったね」。小さな笑みで胸をなで下ろした。

意地は見せた。松本好雄オーナーも「いい競馬だった」とうれしそうにつぶやいた。そして昨年、馬インフルエンザで断念した凱旋門賞への再挑戦を表明した。「勝って堂々と行きたかったけど、ソーッと行きますか。これで復活ですね。偉い馬です。まだ夢が残りました」。王座奪回へ、再び光が差してきた。

3着アサクサキングス  まだ良くなる

 上位2頭との着差は2馬身半。昨年の菊花賞馬アサクサキングスは3着に敗れた。3番手追走から、4角では先頭に並びかける積極策。「(1番人気の支持を受けて)王道のレースをした。早めにスパートをかけたが、メイショウサムソンはとりつくのが速かった。あのあたりが貫禄(の違い)」と四位。それでも「彼には時間がある。良くなると思う」と前を見据えた。また、大久保龍師は次走に関して明言を避けたが「成長の余地を残している」と、今後の反撃を誓った。

4着ホクトスルタン  父子4代Vならず

 現時点では健闘と言っていい。父子4代盾制覇という偉業に挑んだホクトスルタンは、ダッシュを決めてハナを奪い、リラックスした走りで後続をリード。直線は外から強襲されたが、重賞未勝利の身で0秒5差の4着は、スタミナ満点の血のなせる業だろう。「最後は一杯になったが、言うことのない内容だった」と横山典は褒めたたえる。庄野師も「3頭は強かったけど、課題のゲートも速かったし自分の競馬はできた」納得の表情で振り返った。

12着ポップロック  まさかの大敗…

 堅実派のポップロックがまさかの12着に大敗。これまでは04年10月の鳴滝特別9着が最低で、デビュー以来初めて2けた着順に崩れた。中団を追走し、3角で4番手まで押し上げたが、勝負どころではすでに手応えが怪しかった。内田博は「ユタカさん(メイショウサムソン)が来る前に動きたかったが、反応しなかった。最後も伸びていないし…」と納得がいかないといった表情。思わぬ結果に、がっくりと肩を落とした。

アドマイヤジュピタ 牡5歳。父フレンチデピュティ、母ジェイズジュエリー(母の父リアルシャダイ)。馬主・近藤利一氏。生産者・早来 ノーザンファーム。戦績・13戦7勝。重賞・07年アルゼンチン共和国杯、08年阪神大賞典に続き3勝目。総収得賞金・326、579、000円。友道康夫調教師、岩田康誠騎手ともに初勝利。

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