皐月賞

トゥーレ 
2馬身半差圧逃V

2008/4/20 中山競馬場

▼第68回皐月賞
1着 キャプテントゥーレ 川田

2:01.7
2着 タケミカヅチ 柴田 2 1/2
3着 マイネルチャールズ 松岡 ハナ

牡馬1冠目は格言通りの結果となった。スピードのある馬が勝つ―。7番人気の伏兵キャプテントゥーレが芦毛の馬体を躍らせ、2馬身半差で逃げ切った。01年アグネスタキオンとの父子制覇を達成、川田将雅騎手(22)=栗東・フリー=は通算19度目の挑戦でG1初制覇となった。次はダービー(6月1日・東京)で2冠達成を目指す。2着には内々から伸びたタケミカヅチが入り、1番人気マイネルチャールズは追い込み届かず3着に敗れた。

キャプテントゥーレ

1着でゴールするキャプテントゥーレ=中山競馬場

キャプテントゥーレ

積極的にハナを奪ったキャプテントゥーレ(右)がそのまま逃げ切り、皐月賞制覇

川田あっと驚くGT初星

こん身騎乗ハマった


 先頭を駆け抜けた芦毛の馬体には、泥ひとつ付いていなかった。キャプテントゥーレが2馬身半差の逃走劇。3冠へと続く第一の扉をスピードでこじあけた。

 鞍上の腹は最初から決まっていた。好スタートを切って先頭へとリード。後続を引きつけない、絶妙な逃げだった。「バテない脚を生かそうと、後ろを突き放す気持ちで。残り4Fから出して行って、直線手前ではエンジンを吹かした」。川田の振るう2発目のステッキに反応した直線は、さらに後続との差を広げた。

 後ろを見ずに懸命に追った。チラッとターフビジョンを確認する。セーフティーリードだ。「足音が聞こえないし横に馬もこない。ターフビジョンを見たらだいぶ突き放していた。歓声も“残っちゃうぞ”的で…。そこから2、3完歩目で“勝てるな”と。あとは必死に追いました」。泥だらけの17頭を従えたG1初制覇を「“勝ってもうたな”と。気持ちいいですね」と川田は笑顔で振り返った。

 4度目のタッグだった。朝日杯FS3着、弥生賞は4着。ここ2走には悔しい思いが残っていた。「何とか結果を出したいと思っていた。弥生賞は僕も下手に乗ってしまったので…。その経験を生かそうと。何もかもがうまくいった。僕なんかを乗せて勝つぐらい、いい馬」。昨年はG115戦に騎乗し、同じ中山のスプリンターズSでは2着に敗れた。「2、3、4、5着はあったから」。積み重ねてきた経験も、頂点に届いた原動力のひとつだった。

 「逃げろ!逃げろ!」。スタンドから声を張り上げた森師は7年ぶりのJRA・G1制覇となった。18キロ減の馬体重には「10キロ軽かった」と予想外だったというが、「久しぶりですからね。うれしい」と喜んだ。作戦勝ちだ。「馬場も悪いし、ミホノブルボン(92年皐月賞)が逃げ切った時のような馬場。先行した方が強いかなと思った。ジョッキーには“待っているとやられる。自分の力で”と話した」。かつて、助手として所属していた戸山厩舎のスターホースが逃げた皐月賞。1冠を得たトゥーレと、その姿をだぶらせた。

 ダービーでは他馬を迎え撃つ立場となった。「2F(の距離延長)がどれぐらい大きなものか分からないけど、この馬が気分のいい競馬をするのが一番」と川田が言えば、「自分の競馬に徹するだけ」とトレーナーも戦法に迷いはない。再び逃亡策に出るのか。スタイルを貫き、頂上決戦で第二の扉を開く。

森調教師、川田、吉田照哉氏

皐月賞制覇に笑顔がこぼれる(左から)森調教師、川田、吉田照哉氏=中山競馬場

社台軍団3連勝だ

【ワンツー決めた 】

 高松宮記念、桜花賞に続き、社台レースホース所有馬が3連勝。今回の皐月賞では、2着タケミカヅチとのワンツーのおまけつきだった。軍団総帥の吉田照哉氏(60)は「流れが向いているね。キャプテントゥーレは生まれた時から素晴らしい馬で輝いていた。4代連続の重賞勝ちだから素晴らしい」と、スキーゴーグル〜スキーパラダイス〜エアトゥーレと続く、なじみの母系血統馬の勝利に目を細めた。また高松宮記念に続く勝利となった社台ファームの池田充場長(47)は「パドックで馬を見て内心、期待していたんです」と満面の笑みを浮かべていた。


ブラックシェル(左)マイネルチャールズ

ブラックシェル(左)と並んで引き揚げるマイネルチャールズ=中山競馬場

チャールズ  3着猛追及ばず…

 展開、そして力を要する馬場が向かなかった。1番人気に推されたマイネルチャールズは、必死の追い上げも届かず3着に敗れた。道中は中団、馬込みの中で折り合いに専念。3角過ぎから手を押しながら猛然とスパートをかける。体全体を使った松岡のゴーサインに応え、持ち前の勝負根性で坂を駆け上がった。しかし、キャプテントゥーレに悠々と逃げ込まれ、内をすくったタケミカヅチにも鼻差及ばなかった。

 「自分の競馬はできたので満足しています。ダービーへ折り合いも大丈夫だったし、悲観する内容ではありません。今日は展開が向かなかったです」と松岡は淡々と振り返った。自身にとってのクラシック初制覇の夢もお預け。「そんなに甘くはないですね」とは言ったが、人馬にとってこの悔しさは、きっと大きなバネとなるはずだ。

「体が小さいのでこの馬場も厳しかった。ダービーはパンパンの良馬場でやりたい。でもよく頑張ってくれたし、ジョッキーもうまく乗ってくれました」。所有するラフィアンの岡田紘和代表もサバサバとした表情。この敗戦を糧に、府中の大舞台で大輪の花を咲かせる。

ブラックシェル  あれれ6着

 2番人気に推されたブラックシェルは6着に敗れた。「馬群の真ん中で動くに動けなかった。それでもはじけそうな感じがあったんだけど…。馬場を気にした感じの走りだった。パンパンの良馬場の方がいいのかも」と武豊は首をかしげる。松田国師は「流れが落ち着いたし、ちょっとごちゃつくところもあった。完歩の大きな馬だから、東京で巻き返したいですね」とダービーを見据えていた。

タケミカヅチ  大健闘2着

 6番人気のタケミカヅチが奮闘。内から伸びてマイネルチャールズとの2着争いを制した。「折り合いはついたけど、ほんの少し気持ちが入っていた。それだけにもう少し速く流れてほしかった。でも、よく走っているよ」と柴田善は相棒の健闘をたたえた。「悔しいけど仕方がない。それでも、どんどん弱点を克服して馬は強くなっている」と大江原師は納得した表情。短期放牧を経て、ダービーに直行する予定だ。

ショウナンアルバ  予想外14着

 予想外の大敗だ。3番人気に推されたショウナンアルバは、直線でズルズル後退して14着に敗れた。スタート直後から手綱を抑え、道中は後方の位置取り。向正面で馬群の外から押し上げ、4コーナー手前では中団に位置していたが、直線で力尽きてしまった。蛯名は「折り合いは付いていたが、馬場を気にしているようだった。前が止まらない流れになってしまったしね」と敗因を語った。

キャプテントゥーレ 牡3歳。父アグネスタキオン、母エアトゥーレ(母の父トニービン)。馬主・(有)社台レースホース。生産者・北海道千歳市 社台ファーム。戦績・7戦3勝。重賞・07年デイリー杯2歳Sに続き2勝目。総収得賞金・202、628、000円。森秀行調教師は00年エアシャカールに続き2勝目。川田将雅騎手は初勝利。

Copyright(C) 2011 デイリースポーツ/神戸新聞社 All Rights Reserved.
ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。ご注意下さい。
当サイトは「Microsoft Internet Explorer 4.x」「Netscape Navigator/Communicator 6.x」以上を推奨しています
Email : dsmaster@daily.co.jp